映画『TRAIL』レビュー

到底許されない、時代の流れに逆らった映画

少々暴力的に言えば、今、デジタル技術の進歩により、実は自主映画も商業映画もある一つの方向に向かおうとしている。何かがやりやすくなり、コンパクトになった事で起きている現象である。

それはどんな事でわかるかと言えば、自主映画も、商業映画も、トンデモない駄作が減った、という事に現れている。だが、本作はその流れに、大きく逆らっている。言い方を変えれば、自分たちを映画通だと思っているただのアーカイブ人間たちから、0点や星一つという酷評をうけるリスクを取った作品だからだ。もっといえば、この映画は、日本人が捨てたい、いわゆる日本人の不自然な悪い癖がすべて詰まっている。アンチエスタブリッシュメント映画だと思う。

本作の表面上の売りは、鳥取の大自然の中で、三人の役者としては素人の、だが本物の芸術家を起用しているところだろう。だが、彼らの見せる表情は、日本人が見たくない、日本人の不自然な(西洋的ではない、アジア、中国的でもない)自然の姿だ。ある人は映画でわざわざそのような状況を見たくはない、時間の無駄だ、というかも知れない。だが、それらが、商業映画では絶対不可能な驚くべき雲待ちショットや、地元の僅かの人間にしか見られたことが無かったであろう森の中で銃撃戦のように光る蛍の光や、汚い川の濁流、荒廃した町の風景、そしてその彼らの作った芸術作品、音楽などを取り巻く高度な演出によって明らかに一つの方向が見えてくる。

自主映画であると言う事もこの映画のダサさを強調するかもしれない。だが、そのダサさを知れば知るほど、そこにしか今の私たちには答えがないということも見えてくる。和語を生み出して以来、恥の中に美を探してきた日本人の、その大きな流れ、例えば源氏物語などのような流れの中にある作品だと言える。
これらの事を、わざとやる、という手法に敬意を感じる。
評価としては「サウダーヂ」級の評価をしている。

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TRAILのポスター
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澤田 サンダーのプロフィール画像

澤田 サンダー

伊参スタジオ映画祭シナリオ大賞2010年中編グランプリ。函館港イルミナシオン映画祭シナリオ大賞審査員奨励賞。福岡インディペンデント映画祭優秀作品賞など。

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