映画『藁の楯 わらのたて』レビュー

映画自体が「藁の盾」。

リアルを装っているがユルい。

まずSP描写。清丸に度々銃を向ける白岩(松嶋菜々子)は単なるツンデレで、2回も目を離して2回目で撃たれる。しかも冒頭で銘苅(大沢たかお)が着ていた防弾ベストを着ていない。アホに見える。制作側のユルい造形が松嶋渾身の演技をドブに捨てている。
清丸護送の拘束が甘い。金賢姫は舌噛みを防ぎ口を利かせないためマウスピースを噛まされ顎を固定されていた。一方徹底した拘束をハンニバル・レクターは破った。この映画でもそれくらいの流れは作れるはずだ。
警察組織に蜷川の金が事前に浸透している描写があるが、それなら賞金広告など出さずに裏の手で警察に殺させればいい。わざわざ清丸に賞金をかけて社会に露悪させる「蜷川こそ巨悪」の描き方が曖昧なままなのだ。

「IF」の考察も足りない。

○「清丸サイト」だけでなく、TwitterなどのSNSももっと動く。○清丸殺害OKの「復讐派」の一方で、清丸の人権を謳う「エセ人権派」も出る。○蜷川に対抗するように、IT長者が清丸の生死を賭けてネット上に賭場を開く。○復讐派と人権派で追跡と争奪戦。生かす側にも「清丸を使って社会を見返す」という歪んだ野望がある。○しかし「普通の人たち」こんな様を子供たちに見せたくないと思う大人や若者たちが、銘苅に手を貸し、清丸を隠し、リレーで護送を進める。○復讐派は実力で襲いかかる。人権派はSNSを使って警察や銘苅・白岩の醜聞を広げる。手を貸す「普通の人たち」も襲われて死んでいく。○途中まで清丸を殺す衝動に逡巡していた銘苅が「普通の人たち」の死に直面して、心の舵を切り直す。

ここまでやればもっと燃えられたと思うんだけど。

劇中で衝突する欲得と倫理観の双方が軽い。清丸と蜷川を見つめる人々の「侮蔑」「偽善」「無関心」を浮き彫りにし「あなたならどうする?」と観客に突き付けないと、銘苅の苦闘も際立たない。

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藁の楯 わらのたてのポスター
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Daisuke O-okaのプロフィール画像

Daisuke O-okaFreak

某メディア企業で取材・出稿を伴うVTRディレクターをやってます。映画製作ビジネスの経験有り。そのうち何かやってやろうとユルく模索中。映画以外では、スノーボードや自転車ほかアウトドア全般、マンガに読書、クルマ、ねこ、これからの社会の動きなど、興味は全方位。よろしくです。

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