映画『砂漠でサーモン・フィッシング』レビュー

やはり鮭は塊で焼くに限る。

砂漠でサーモンフィッシング、と書くと長いので「鮭」で良い。

本当ならプロジェクトX級の難事業だ。
それも「映画を観ている誰もと同じ、悩み多き人々が頑張って成し遂げた」という語りなら判る。
しかし「あー収まるところに収まって良かったね」というホンワカした観後感しか残らない。要は単なる「惚れた腫れた」話。

サイモン・ビューフォイの脚本といえば「フル・モンティ」「スラムドッグ・ミリオネア」そして「127時間」正直、そんなエネルギーを期待していた。

難事業への壁。それは家族や恋人とのプライベートにあり、国家や企業の体面や欲得にある。それをも乗り越えるのは何だったのか。彼らが捨てたものは何で、得たものは何だったのか。捨てるのも得るのも軽すぎる。

シャリフの思いは壮大だ。自分の趣味の鮭釣りを自国でやりたい我儘だけじゃない。自国を緑化して農業と観光を盛り上げ、殺伐たる中東にもう一つの選択肢を置く気概なのだ。それもスコットランドの城やテントの中での茶飲み話で語られてしまう。

ユーモアや優しさが必要な題材なのは間違いない。しかしそれが全面に出てしまい、各々の登場人物が追い詰められたときに勝ち得る「発見」や窮地を乗り越える「提案」の一切がボケているのだ。

鮭が放流される場所も「これ?…これ?」というあっけなさ。どんな場所にどんな規模で放流するのかを画や位置関係で見せてくれていないのでワクワクしない。シャリフの思いはフランクやハリエットの恋模様に掻き消されて萎んでいる。仕事に恋が絡むだけの話なら「砂漠に鮭」でなくロンドンやNYでやればいい。

キャストも良い。撮影も良い。題材も良い。しかし料理の仕方を間違った。
やはり鮭はテリーヌやムースなどでなく、塊をガッツリ焼いて塩胡椒に限る。

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砂漠でサーモン・フィッシングのポスター
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Daisuke O-okaのプロフィール画像

Daisuke O-okaFreak

某メディア企業で取材・出稿を伴うVTRディレクターをやってます。映画製作ビジネスの経験有り。そのうち何かやってやろうとユルく模索中。映画以外では、スノーボードや自転車ほかアウトドア全般、マンガに読書、クルマ、ねこ、これからの社会の動きなど、興味は全方位。よろしくです。

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