映画『レ・ミゼラブル』レビュー

ミュージカルの醍醐味とは歌の力なのだ、と思い知る

ミュージカルの醍醐味とは歌の力なのだ、と思い知る力作

1985年にロンドンのウエストエンド、その後ニューヨークのブロードウェイでロングランヒットした名作ミュージカルの映画化として、堂々とした風格を備えている。

原作は150年前に書かれたヴィクトル・ユーゴーの「ああ無情」。19世紀の革命後のフランスを舞台にした“コケが生えた”ような物語だ。観客の多くは結末に至るまでストーリーを熟知していて、予定されたことしか起こらない。貧困や格差にあえぐ民衆たちが自由を求めて蜂起する。しかし民衆は踊らない。3・11後の初めての選挙にも関わらず、国民の4割が選挙権を放棄したいまの日本社会の姿を重ね合わせることができる。この映画の革命は、民衆たちの「無関心」により失敗に終わるのだ。フランスの三色旗が虚しくはためく。

主演のヒュー・ジャックマン(ジャン・バルジャン役)をはじめとした俳優たちの、感情がほとばしるままに溢れ出す歌声が、観ているぼくらの心を揺らす。ミュージカルとは、俳優たちが“楽器”のように全身を共鳴させて奏でる歌声(肉声)を楽しむ芸術なのだ、と改めて思い知る。

アン・ハサウェイ(ファンテーヌ役)が歌う「夢やぶれて」、サマンサ・バークス(エボニーヌ役)が歌う「オン・マイ・オウン」、そしてエディ・レッドメイン(マリウス役)らが歌う「民衆の歌」。この映画には一度聴いたら忘れられない珠玉のミュージカルナンバーが少なくとも(31曲中)3曲はある。映画がハネた後に感動と興奮そのままに、鼻歌で歌いたくなる名曲だ。とくにメインキャストたち全員による歌声が絶妙なアンサンブルを奏で始め、終いにはオーケストラのように重なり合う、クライマックスの「民衆の歌」に涙が止まらなかった。圧倒的な感動のきわみへと誘う歌の力に、全身が熱くなった。

8
レ・ミゼラブルのポスター
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 3
サトウ ムツオのプロフィール画像

サトウ ムツオFreak

ライター/エディター/ムービーバフ(映画狂)。責任編集のムック『007 Complete Guide ジェームズ・ボンドはお好き?』(マガジンハウス刊、1,500円)が11月30日発売。好きな監督は、クリント・イーストウッド(神)、マーティン・スコセッシ(神)。

映画『レ・ミゼラブル』に対するサトウ ムツオさんのレビューにコメントする

アカデミー賞2017

こんな作品もレビューされてます

婚約者の友人のポスター

愛しちゃったのよ

  日本に紹介された当初は、キワモノ的な才人扱いの印象だっ...

エイリアン コヴェナントのポスター

創られし者、創りし者

 中盤のドス黒い、邪悪な気配は何なのだ。 新型エイリアン“ネ...

ダンケルクのポスター

ダンケルクスピリット

 巻頭の銃声をきっかけに、クリストファー・ノーラン監督は観...