映画『ふがいない僕は空を見た』レビュー

性描写が稚拙な、苦虫をつぶしたようなふがいない映画

窪美澄の小説が'11年本屋大賞2位、山本周五郎賞受賞ということもあって、どんな「性」を見せてくれるのかと期待してみたが、濃厚だという触れ込みの性描写は映像的にまったく「映画的」でなく、3話連続ぐらいのTVドラマで十分な内容で、失望するしかなかった。

ヌードに挑戦した田畑智子は相当に勇気を出したはずだが、監督のタナダユキの描写はありきたりすぎで、ただただ冗長に感じる始末(この話で、141分とは長すぎる!)。ただでさえ貧相な田畑智子のヌードを観せられても、(女性日照りの筆者でも)下半身が1ミリも反応しない。演出をつけたタナダ監督自身がどのようなセックスライフを送っているか詮索する気は毛頭ないが、古今東西のそうしたセンシュアル(官能的)な映画から良質なエッセンスを汲み取るいるわけでもなく、ただただ凡庸な描写に終始したのは残念。

たとえば、ベルナルド・ベルトルッチ監督の『ラストタンゴ・イン・パリ』では茜色した陽光がパリのアパルトマンを照らし、マーロン・ブランドとマリア・シュナイダーが演じた男女の不条理なセックスをコダックカラーで彩っていた。同監督の『暗殺の森』でもドミニク・サンダやステファニア・サンドレッリの衣裳は“ストッキングのたるみ”に至るまで周到に計算されているのだ。

本作ではそうした大前提の性描写があまりにも幼稚で何の工夫もないため(しかもコスプレは生理的に大嫌いだ)、高校生の主人公たちの「赤裸々な生きざま」に斬り込んでいるはずの「本来のストーリー(=感動のポイント)」がぼくには伝わってこないのだ。

永山絢斗や窪田正孝は今後日本の映画界を背負っていく人材なのだろう。プラス点は彼らを観られたことだろうか。蒼井優主演のタイトルじゃないが、ぼくには苦虫をつぶしたようなクソ映画だった。

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ふがいない僕は空を見たのポスター
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サトウ ムツオのプロフィール画像

サトウ ムツオFreak

ライター/エディター/ムービーバフ(映画狂)。責任編集のムック『007 Complete Guide ジェームズ・ボンドはお好き?』(マガジンハウス刊、1,500円)が11月30日発売。好きな監督は、クリント・イーストウッド(神)、マーティン・スコセッシ(神)。

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