映画『声をかくす人』レビュー

「殉教者」のようにロビン・ライトを映し出す、穏やかな光

『大統領の陰謀』(1976)でウォーターゲート事件を告発した「ワシントン・ポスト」社会部記者ボブ・ウッドワードを演じたロバート・レッドフォードが、監督として「アメリカ政府の陰謀」「正義のあり方」という題材に大上段から斬り込んだコクがあるドラマである。レッドフォード先生のアメリカ史講義みたいな興味深い内容になっており、南北戦争終結間際、1865年4月14日に起こったエイブラハム・リンカーン大統領暗殺事件の裏側を描く。

原題は「共謀者」。物語のヒロインは、暗殺実行犯ジョン・W・ブースの共謀者8名のひとりとされた下宿屋の女主人メアリー・サラット(ロビン・ライト)。母親で、未亡人で、信心深いカトリック教徒で、南軍を強く支持し、かたくなに無罪だけを主張していた彼女は、およそ公正とはいえない軍事法廷で裁かれ、アメリカで初めて絞首刑になった女性だ。物語の語り部は、のちに「ワシントン・ポスト」初代社会部部長を務める、彼女の担当弁護士フレドリック・エイキン(ジェームズ・マカボイ)。元北軍大尉で南北戦争の英雄だった彼は、最初市民一般のような「復讐心」から憎悪や怒りを抱いていたが、やがて彼女の無実を信じるように。彼の心の成長がドラマの大きな原動力になっている。

撮影監督ニュートン・トーマス・サイジェルのキャメラが、19世紀の白黒写真に人工着色で色をのせたような淡い色合いで、穏やかな光をとらえていて美しい。ライト扮するサラットが、まるで『裁かるるジャンヌ』(1927)のルネ・ファルコネッティや『デッドマン・ウォーキング』(1995)のショーン・ペン(彼女の元夫)といった「殉教者」のように映し出されていて、胸に迫る。

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声をかくす人のポスター
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サトウ ムツオFreak

ライター/エディター/ムービーバフ(映画狂)。責任編集のムック『007 Complete Guide ジェームズ・ボンドはお好き?』(マガジンハウス刊、1,500円)が11月30日発売。好きな監督は、クリント・イーストウッド(神)、マーティン・スコセッシ(神)。

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