映画『引き裂かれた女』レビュー

引き裂かれて、また1つに

クロード・シャブロル監督最晩年の1本はヌーヴェル・バーグを駆け抜けた映画的記憶を甘美にまとうラブサスペンスである。老小説家と富豪のドラ息子、二人の男に挟まれてヒロインは“引き裂かれていく”。メロウなテンポで展開する前半の恋のさや当ては懐古的過ぎるのではとも思えるが、大胆な省略の話法から後にサスペンスへと展開するシャブロル監督の精緻な演出に唸らされた。

そんな巨匠の優雅なリズムの中においてドラ息子役のブノワ・マジメル、老小説家役のフランソワ・ベルレアン、そしてヒロインであるリュディビーヌ・サニエが映える。特にマジメルは狂気的とも言えるプレイボーイ演技を見せ、怪演の域。サニエのフレンチロリータぶりはある秘密が明かされた後半から、全ての登場人物が彼女に欲情の目を向けているのではと思えるほど艶めかしい。

飛躍を見せるラストに、引き裂かれたのは彼女ではなく男たちだったのではと気付く。名匠の流麗なタッチが味わえる1本だ。

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引き裂かれた女のポスター
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長内那由多のプロフィール画像

長内那由多

タマネギ畑が広がる北海道のド田舎で多感な思春期を過ごす。中学2年生で「恋人までのディスタンス」のジュリー・デルピーに恋をする⇒メインの更新は本館ブログへ移行しました。こちらでは劇場公開作についてたまにアップします。

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