映画『灼熱の魂』レビュー

あまりにショッキングなクライマックスに言葉を失ってしまう、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の渾身作。カナダ国籍のレバノン人作家ワジディ・ムアワッドによる同名戯曲を映画化したアカデミー外国語映画賞ノミネート作だ。
ある日、市民プールで突如として母が放心状態となり、やがて間もなくこの世を去る。彼女の遺言には中東の祖国に夫と長男が生きていると記されていた。遺された双子の姉弟は遺言に従い、母のルーツを探る事となる。

姉弟の道程、政治犯として生きた母の過去、そして孤児から少年兵となった行方知れずの兄。時と場所が何層にも入れ乱れ、次々と衝撃的な事実が明るみとなる展開には作為性を感じるかも知れない。それでもなお観る者を動揺させるのは国や宗教などあらゆる理不尽に身を引き裂かれ、祖国を捨てざるを得なかった人々がいるという時間の厚みがそこにあるからだ。レバノンという特定の国家名、事件名は伏せられてはいるものの、原題通り焦土と化した大地が広がる無常にも美しい映像が、本作に普遍性をもたらした。1つの交通事故が連鎖的に人々を変えていく様を奇怪な魚の口から語らせた前作「渦」でデビューしたヴィルヌーヴ監督。本作も小さな渦がやがて大きな渦に合流していくかのように運命の連環を思わせる。

最後に明かされる夫宛てと長男宛ての遺書の中身…許しも怒りも混在させながら、母はただ1つの大きな感情の渦で憎しみの連鎖をも取り込んでいってしまう。それが単純に愛と名の付くものなのか、僕にはわからなかった。

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灼熱の魂のポスター
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長内那由多のプロフィール画像

長内那由多

タマネギ畑が広がる北海道のド田舎で多感な思春期を過ごす。中学2年生で「恋人までのディスタンス」のジュリー・デルピーに恋をする⇒メインの更新は本館ブログへ移行しました。こちらでは劇場公開作についてたまにアップします。

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