映画『人生はビギナーズ』レビュー

いつまでたっても“初心者”です

とっても素敵な写真の収まったセルフポートレート集のような映画だ。
マイク・ミルズ監督が父を亡くした際の実体験に基づく作品だが、劇中には暖かみとユーモアが満ちている。哀しみも喜びも等しく受け止める、決してこれ見よがしなる事のない慈しみあるヒューマニズム。そんなささやかさが愛おしく思える。

俳優陣のアンサンブルが楽しい。
本作でオスカーを受賞したクリストファー・プラマーは老いたる男の肉体に宿る生きる喜びを優雅に発散して美しい。老優という存在がいかに人生を重ねて輝きを増すのか。演じる事の至高をスクリーンに刻んだ。
息子役のユアン・マクレガーはその陽性の魅力を封じ込めて常に陰気な、困惑の表情を浮かべる。だからこそ、ふとした瞬間の笑顔がいつになく眩しい。いつの間にこんなに繊細な俳優になったんだ。
相手役のメラニー・ロランもフランス女優の魔性をふりまき、魅力的。ユアンとのケミカルもバッチリだ。愛犬アーサーに扮した名犬コスモの妙演も忘れずに!

切りたくても切れない家族の縁というのは煩わしいかもしれない。恋人は一生背負っていくには重すぎるかもしれない。止めてしまえばいいんだけど、辞めて終わらないのが人間関係だ。ぎこちなくともひたむきに生きていく事をそっと勇気づけてくれる、そんな爽やかさが残る映画だ。

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人生はビギナーズのポスター
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長内那由多のプロフィール画像

長内那由多

タマネギ畑が広がる北海道のド田舎で多感な思春期を過ごす。中学2年生で「恋人までのディスタンス」のジュリー・デルピーに恋をする⇒メインの更新は本館ブログへ移行しました。こちらでは劇場公開作についてたまにアップします。

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