映画『アルゴ』レビュー

映画が世界を救う

ベン・アフレック監督第三弾はいよいよオスカー候補に手が届く会心の1作だ。1979年にイランで起きた大使館占拠事件、この裏で行われていたあっと驚く救出作戦の全貌をスリリングに描く。なんとCIAが発案したのはお蔵入りB級映画「アルゴ」撮影のロケハンをでっち上げ、映画スタッフに成り済まして国外へ脱出させるというトンデモ作戦だったのだ!

この事件をベン・アフレックは硬軟自在に映画化してみせた。後のイラク戦争の起因ともなるアメリカの闇に真摯に目配せしながら、ホラ話みたいなホントの話にユーモアをふんだんに盛り込んでいく。陽の目を見なかったB級SFを本物の映画プロデューサーが本物の映画としてデッち上げる虚々実々の面白さ。ハリウッドというデタラメな聖林の荒唐無稽さはアフレックも痛いくらい知るところ。アラン・アーキン扮するギョーカイ人が痛快なまでに毒を吐きまくって笑わせてくれる。

くすんだ、粒子の粗い映像が当時の雰囲気と70年代社会派映画群の風を本作に持ち込んでいるのも魅力だ。作風に合わせて撮影監督を起用するアフレックは今回ロドリゴ・プリエトを招聘。昔の映画への憧れが過ぎて野暮ったくなる製作のジョージ・クルーニー兄貴もこれには満足だろう。

そして前二作同様、やっぱりキャスティングが絶妙なんである。今回は決してメインストリームの俳優陣ではないが、面構えと渋み、そして映画黄金期70年代の空気を体現できる俳優たちが揃った。中でもクライマックスで場をさらうブライアン・クランストンの颯爽とした凛々しさといったら!アフレックという二枚目看板が出過ぎず霞まずにいるおかげで極上のキャストアンサンブルが実現した。

虚構が現実を打破する力になり、虚構が僕たちに夢や希望を与えてくれる。この映画の根底にあるのはアフレックの溢れんばかりの映画愛だ。「さあ、映画を撮ろう」彼自ら発すこのセリフに胸が高鳴った。

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アルゴのポスター
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長内那由多のプロフィール画像

長内那由多

タマネギ畑が広がる北海道のド田舎で多感な思春期を過ごす。中学2年生で「恋人までのディスタンス」のジュリー・デルピーに恋をする⇒メインの更新は本館ブログへ移行しました。こちらでは劇場公開作についてたまにアップします。

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