映画『新しい靴を買わなくちゃ』レビュー

リアル感の欠如をどう受け止めるか

人気脚本家の北川悦吏子が監督を務め、岩井俊二監督がプロデュース、音楽が坂本龍一、主演が40代になっても美しさが衰えない中山美穂と、年代を問わない幅広い層の女性から支持を得ている向井理の2人。「映画というものは年に数回程度、特別な時に観賞するもの」という方針の方ならともかくも、年間数十本、数百本と劇場で映画鑑賞している人ならば、この顔触れを見る限り「ヒット作を生みだす」という至上命令が課せられていることを感じない訳には行かないだろう。
そういった意図があるかないかは観客には知らされなくとも、ストーリーの端々に見られる展開は、トレンディドラマに長けた監督ならではと考えざるを得ない。出会いもそうだし話の盛り上げ方も然り。舞台がフランスであり、中山が既に40代ということを考慮しても、このお子さまのような恋愛の展開は正直信じ難い。これがフランス映画ならば家に連れ込んだ瞬間に関係が出来て当然だし、フランスでの暮らしもおままごとのようなことばかりではないはずだからだ。
中山の仕草は1つ1つが「可愛い」ものだが、彼女と同じように齢を重ねた同世代の観客からしてみれば、それが非現実的なことばかりに見えるのではないか。ましてフランスでの話、ストーリーを身近に感じないように設定し、そこを楽しんでもらいたいという製作側の意図が見え隠れする。「絶望的なまでのリアル感の欠如」がトレンディドラマの根底にあり、それを踏襲する以上、この映画もそれ以上にはなり得ない。むしろサブで出演した桐谷美玲と綾野剛のコンビの方がふさわしい様にも思う。皮肉なことに彼らの結末の方が余程リアルだったのだが。
劇場内はほぼ30~50代女性で埋め尽くされていた所を見ると、このジャンルが一定の層に根強く支持されておりニーズもあることがわかる。しかしマーケティングされた映画をあてがわれたまま観賞する、それでいいのかという疑念も残る。

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新しい靴を買わなくちゃのポスター
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Kayoko Ichikawa Kawaseのプロフィール画像

Kayoko Ichikawa Kawase

好きな映画はフランス映画、中東映画、ラテン系映画など。
多くのものを吸収できる作品を中心に観賞しています。

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