映画『ル・コルビュジエの家』レビュー

隣人に求めるもの

世界遺産申請中の、実在する築約60年の家を大胆にもロケに使ってしまうんだから、さぞかし邸内のあちこちをレポする感覚で撮影し、お宅探訪要素もあるのだろうと思ったのだが、その要素は正直薄い。本作のメインはあくまでも家の中に住む人、そして人と人との関係性にある。

とは言え隣人の問題ならば日本ってかなりシビアな問題を抱える人も多いのではないだろうか。これだけ都会では住居が密集しているので境界線や騒音などの問題も多い。にも関わらず人口密集地帯では隣人に対しては基本的に我関せずの姿勢を取る人が殆どでもある。絆とか何とか云われているけれど、根本的に日本人は他人に介入することを避ける傾向はある。

翻って本作。仕事で名声を得て持てるものをほぼ手中にし、住まいは世界遺産級の住宅という、男の理想形を行くレオナルドは、不遇な人生をコツコツ生きてきた隣人ビクトルの無邪気な要望に不満を持つ。ここでビクトルが悪人なら話は早いのだけど、外観のコワモテからはイメージできないほど、ビクトルはフレンドリーな男だった。決していいことがあったわけではない人生、たった1つの望みを叶えたいというビクトルの申し出を冷たく却下したいレオナルド。

何もかも揃っているレオナルドは、どうしてその程度のことが我慢できない?といぶかる観客に、ラストシーンでのどんでん返しは本作のメインテーマを突き付ける。他人からの表層のイメージは悪かったとしても、何を行動の指針としているのかが最後にはその人間の価値を決める。ビクトルの咄嗟の判断を、レオナルドは一体どう受け止めるのだろう。従って今後のビクトルへの対応如何がレオナルドの価値自体を決めることとなる。隣人は選べないかもしれないが、実はよく知らないだけで、意外な側面などというものは違う角度から見つかるはずである。立派な家に住み他人を拒絶していては決してわからないことである。

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ル・コルビュジエの家のポスター
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Kayoko Ichikawa Kawaseのプロフィール画像

Kayoko Ichikawa Kawase

好きな映画はフランス映画、中東映画、ラテン系映画など。
多くのものを吸収できる作品を中心に観賞しています。

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