映画『英国王のスピーチ』レビュー

心と身体

アカデミー賞で強敵「ソーシャルネットワーク」を破り、主要4部門に輝いた実録ドラマ。ジョージ6世の伝記ではあるのだが、監督のトム・フーパーは前作「くたばれユナイテッド!サッカー万歳」同様、人物のほんの一時に焦点を絞り、ジョージ6世が吃音障害を抱えながらもドイツとの開戦スピーチに挑むまでを描く。友情、夫婦愛を得て内気な国王が史上最もスピーチの巧い政治家ヒットラーに挑むという歴史ならではのダイナミズムが面白く、ハンデを乗り越える主人公というメッセージは万人に共感された。「ソーシャルネットワーク」のようなその年にしか生まれ得ない時代性はないが、堅実で巧みな英国映画の本領である。

見所はデヴィッド・サイドラーのユーモアあふれる台詞を軽やかに操る俳優陣のアンサンブルだ。死をまとった耽美的な「シングルマン」から一転、内気なジョージ6世に敬意を払いつつ誰もが愛せるチャーミングな人物として見せたコリン・ファースは本作でついにオスカーを受賞。彼を支えるセラピスト役にはジェフリー・ラッシュが扮し、相変わらず唸るほど巧みな演技力で魅せる。フーパー監督の前作同様、ここにも表舞台に立つ者と裏から支える者の互いになくてはならない結束があり、ベートーベンの第七を後ろにラッシュがファースからスピーチをたぐり寄せるシーンは圧巻だ。

芽の出ない舞台役者だったライオネルのセラピーはどれもが理に適っている。身体をリラックスさせ、大声を出し、時に歌って、心を解放する。不可分な心と身体の問題を見つめ直した時に言葉が前に出てくる。この映画にはそんな行為の清々しさそのものがあるではないか。

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英国王のスピーチのポスター
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長内那由多のプロフィール画像

長内那由多

タマネギ畑が広がる北海道のド田舎で多感な思春期を過ごす。中学2年生で「恋人までのディスタンス」のジュリー・デルピーに恋をする⇒メインの更新は本館ブログへ移行しました。こちらでは劇場公開作についてたまにアップします。

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