映画『ヒューゴの不思議な発明』レビュー

メリエスからスコセッシへ、スコセッシからメリエスへ

日米共に3Dファンタジー大作のような売られ方をして損をした印象がある本作は監督マーティン・スコセッシが映画に恋した瞬間を描き、さらなる地平へと駈け出した瑞々しいプライベートフィルムである。時計台の窓から寂し気に外の世界へ想いを馳せる主人公ヒューゴ少年はまさに幼少期、ぜんそくのために閉じこもらざる得なかったスコセッシ少年そのもの。ヒューゴ少年はジュード・ロウ扮する父の遺した機械人形を完成させる事を夢見ており、そのカギ穴が自身の孤独を埋める人生のヒントだと信じている。かくしてヒューゴ少年=スコセッシは映画創成期の“特撮の父”ジョルジュ・メリエスと出会う事になるのだ。

メリエスは奇術師であった自身の技能を活かして映画に初めて特殊効果をもたらした人物である。キャリア終盤に差し掛かって初めて3D技術に挑んだスコセッシの興奮は、映画の隅々から伝わってくる。3Dは見事なプロダクションデザインを活かすための技であり、カメラはいつものように圧倒的なテンションを持って長回される。一流のスコセッシ組が結集して作り上げられた世界になんとハワード・ショアが手掛けた軽やかなミュゼットが流れれば、映画にはスコセッシ史上かつてなかった程に愛が満ち溢れるではないか。

だが、ベン・キングスレーが演じるオモチャ屋の主人がジョルジュ・メリエスと判明する件ではスコセッシの目線も少年ヒューゴよりメリエスに近づく。映画史を変えた人物でありながら時代の潮流に呑まれ、筆を折らざるを得なかった芸術家の苦しみと哀しみは胸を打つ。自身もクラシックフィルムの保護に務めるスコセッシは映画を通して忘れられた巨匠を再生したのだ。

これはスコセッシから映画へのラヴレターである。時は違えどフィルムの回る所には映画の魔力に陶酔し、我を忘れて見入る人々の笑顔がある。3Dという劇場でしか見られないフォーマットを用いたのはそのためだったのだ。

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ヒューゴの不思議な発明のポスター
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長内那由多のプロフィール画像

長内那由多

タマネギ畑が広がる北海道のド田舎で多感な思春期を過ごす。中学2年生で「恋人までのディスタンス」のジュリー・デルピーに恋をする⇒メインの更新は本館ブログへ移行しました。こちらでは劇場公開作についてたまにアップします。

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