映画『鍵泥棒のメソッド』レビュー

人生はリセットできるのか? でもそれを決めるのは、結局は自分。

実は初内田けんじなのだが、あまりにも見事に構築され構成された脚本に感心することしきり。こんなに上手い脚本が書ける日本の映画作家、そうそう居ないと思う。お見事! としか言いようがない。とにかく先が読めず、これどーなっちゃうの? と思っているうちに、どんでん返しがあり、伏線が収まるところにうまく収まり、最終的にはめでたしめでたし、となる作劇術には脱帽するしかない。
また、堺雅人、香川照之、広末涼子、と普通の映画だと「演技過剰」で鼻につく嫌いのある主演三人が、かなり抑えて三人三様の人物をきちんと演じていたのが、とても良かった。特に香川照之演じる記憶喪失な男が、入れ替わってしまった役者の安物の服を着るのだが、その洋服の似合わなさ加減が凄いとしか言いようがない(笑)。
人物造型やバックグラウンドもそれぞれ良く練られていて、人の性格は、記憶を喪失しようがするまいが、本質的には変わらない、しかし与えられた自己に関する偽の情報を信じることで、人生を変えることもできる、という部分にも説得力がある。
自分の人生をリセットしたい時、人生の先行きに悩んでいる時、きっとこの映画を見ると、気持ち的に助けられるんじゃないかと思う。いや、ホント面白かった。

少し残念に思ったのは、予告編。映画を観終わった後で思ったのは、もう少し予告でネタばらしをしないで欲しかったかも。実のところ、あの予告編で披露されたコミカルに要約されたあらすじを知らない方が楽しめた映画だと思う。面白さを強調したかったのは分るけど、必要以上にコミカルな部分を強調し過ぎて、実際に本編を見た時に、予告から期待するコミカル度に比べて、だいぶ地味に感じてしまって損しているような。

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鍵泥棒のメソッドのポスター
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大串 京子

シアトルに本社があるゲッティイメージズという映画や映像や広告などの素材を提供する会社で何でも屋的な仕事をしています。

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