映画『バレエに生きる パリ・オペラ座のふたり』レビュー

順風満帆な他人の人生って、そう面白いものではないらしい。

振付家の大家ピエール・ラコットと、その妻ギレーヌ・テスマーのバレエ人生を、二人のインタビューを交えながら過去から現在まで、過去の映像資料を中心に、時間軸通りに追ったドキュメンタリー。
だもので、ドキュメンタリーとしては作家の独自の視点やアイディアや切り口がなく、何の捻りも工夫もなく、単に老人二人の回顧録を忠実に映像化しただけ、しかも二人が口を揃えて「私達は幸運だった。いつも仕事が舞い込み、苦労した事はない」と言っている順風満帆な人生を時間通りに追っているだけなので、「あ、そう、良かったね。だからどーした?」感が拭えなかった。そう口を揃えて言う二人が、実は裏で苦労したであろう事象を描き出すのがドキュメンタリーとしての本来の面白さだと思うのだが。
しかし、私がピエール・ラコットの名前を認識したのは、振付家として活躍している時代以降で、しかも「パリ・オペラ座のすべて」で口うるさく踊りの指導をしている姿の印象が強かったもので、太っちょの老人のイメージしかなかったのだが、この映画で初めて華麗にパリ・オペラ座で踊る若い頃の映像を観て、たまげたのであった。そうだよね、踊れなきゃ、普通は振付なんか出来ないよね。モーリス・ベジャールが若い姿で踊っているのを観た時もビックリしたけど、ピエール・ラコットはパリオペラ座のエトワールだった、という事実にも大ビックリ。
そして、私の中でピエール・ラコットは「古典復元の大家」という認識だったのだけど、若い頃はモダンな振付もやっていた、という事実にも、また三倍たまげたのであった。当時の「ハムレット」や「La Voix」の映像を観て、全編観たいと思った。
そういう意味では、貴重な映像満載なので、バレエの歴史に興味のある人には面白いと思う。また、最近のパリ・オペラ座の舞台映像も出て来るので、オペラ座ダンサーファンもきっと楽しいと思う。

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バレエに生きる パリ・オペラ座のふたりのポスター
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大串 京子のプロフィール画像

大串 京子

シアトルに本社があるゲッティイメージズという映画や映像や広告などの素材を提供する会社で何でも屋的な仕事をしています。

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