映画『僕はイエス様が嫌い』レビュー

また逢う日まで

 思いもよらぬ事件や事故に胸を痛めるにつけ、こんな世の中で過剰な期待をかけられる神様も、気の毒に思えてきたりもする。

 祖父に先立たれた祖母と暮らすため、雪深いミッション系の学校に転校してきた小5のユラは、新しい環境になじめずにいたが、ちっちゃな“イエス様”が救世主として降臨する。守護神と呼ぶには見るからに頼りなげな彼から、ささやかなギフトをもらううちに、同じクラスのカズマとも親しくなる。サッカーが得意で人気者の彼に、少々の嫉妬交じりの憧憬を抱きつつ、ふたりはかけがえのない友情で結ばれるが、すべてを暗転させる悲劇が起こる。

 カズマと興じた永遠にゴールできそうにない人生ゲームのごとく、あまりに理不尽な試練を受け止めきれないユラの怒りは、何でも美談にしがちな一部の大人や、肝心な時に手を差し伸べてさえくれない神様もどきに、一瞬でも心を許した自身にも向けられる。映画初主演の佐藤結良は、長く切り揃えられた前髪の陰に、にわかに他者には悟らせまいとする複雑な自我を忍ばせ、無邪気な子ども時代の終焉をナチュラルに好演。世代的についつい感慨深く見入ってしまう佐伯日菜子が、信仰をもつことの強さと脆さを、さりげなくも繊細に体現している。

 本作で長篇デビューを飾る、96年生まれ(!)の新鋭・奥山大史監督は、振り返る度に喜びと同時に悲しみが湧き起こるような、忘れたくても忘れられない自らの想い出と誠実に向き合い、甘い感傷にふけることなく、残酷かつ美しい物語を紡ぎ上げる。あんなに大切な瞬間を分かち合ったのが嘘みたいに、それっきりになったままのひとは、誰にでもいる。ユラの亡き祖父が最後の日々を過ごした、見晴らしのいい和室の障子に開けられた覗き穴が、生死を超え、白銀に映える“向こう側”の情景を垣間見せてくれる。いつかまた、めぐり逢えると信じて、懐かしい顔たちを思い浮かべたくなる、詩情溢れる逸品だ。

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僕はイエス様が嫌いのポスター
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服部香穂里のプロフィール画像

服部香穂里

映画界の末端で、浮草のように漂うております……。

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