映画『ボヘミアン・ラプソディ』レビュー

ベストヒット・オブ・クイーン

クイーンを知らない1982年生まれの筆者には有難い“ベストヒット盤”のような映画だ。

フレディは本名をファルーク・バルサラといい、1970年には既にゲイとしてイギリス社会に己のアイデンティティを見出せずにいた。そんな彼の唯一の居場所となったのが音楽であり、バンドであり、ファンだったのだ。クイーンが徐々に人気を集め、ついに名曲『ボヘミアン・ラプソディ』を生み出す前半部分のサクセスは映画のテンポも快調で実に楽しい。特に70年代パートの時代風俗を撮らえたカメラのライティングは美しく、熱演するフレディ役ラミ・マレックら俳優陣も実にいい顔つきで、映画には高揚感が満ちみちている。

中盤、フレディのソロデビューが決まってからバンドが解散の危機を迎える展開は音楽伝記映画のお約束かも知れない。ソウルメイトとも言えるメアリー・オースティンとの結婚生活と自らのアイデンティティによって引き裂かれた彼がライヴエイドを機に立ち上がる姿は熱い。エイズに冒されている事をメンバーに告白したのはこれよりずっと後の出来事だったらしく、そんな劇的脚色に批判もあるが製作は当事者であるブライアン・メイとロジャー・テイラーである。これはむしろ伝記というより“伝承”であり、フレディ・マーキュリーもクイーンもかく語られるべきである、という気概を感じた。

クライマックスとなるライヴエイドはハリウッド映画ならではの一大スペクタクルだ。持ち時間20分を誰よりも多い全6曲で歌い切ったこの場面はまさにクイーンのスーパーヒットメドレー。中でも自身のアイデンティティに苦しんだ『ボヘミアン・ラプソディ』の歌詞がここではフレディの辞世の句として意味を持つ解釈は涙なくして見られない。時空を超えて伝説的ライヴを体験するこの興奮はあらゆる世代の心を揺り動かす事だろう。そもそもクイーンを聞いてアがらないヤツなんているワケないけどね!

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ボヘミアン・ラプソディのポスター
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長内那由多のプロフィール画像

長内那由多

タマネギ畑が広がる北海道のド田舎で多感な思春期を過ごす。中学2年生で「恋人までのディスタンス」のジュリー・デルピーに恋をする⇒メインの更新は本館ブログへ移行しました。こちらでは劇場公開作についてたまにアップします。

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