映画『ボーダーライン ソルジャーズ・デイ』レビュー

野獣の国、再び

2015年に公開された『ボーダーライン』の続編だが、監督のドゥニ・ヴィルヌーヴも撮影のロジャー・ディーキンスも降板、主演を務めたエミリー・ブラントも不在である。その代わりに強烈な印象を残したジョシュ・ブローリン、ベニチオ・デル・トロの2大曲者俳優を主役とし、『最後の追跡』『ウインド・リバー』と好投の続く気鋭脚本家テイラー・シェリダンが再登板。より男臭いアクションハードボイルドとなった。

今回、ブローリン率いるCIA特殊チームは麻薬王の娘イサベルを拉致、対立カルテルの犯行に偽装して組織間の抗争を誘発しようとする。メガホンを引き継いだステファン・ソッリマ監督は職人的な手際の良さだが、前作がヴィルヌーヴ、ディーキンスの非凡な才能によって作られた“作家映画”である事が逆説的に証明されてしまった。亡きヨハン・ヨハンソンによるテーマ曲を共有しながらもあの並外れた緊迫感には及ばず、“野獣の国”メキシコを撮らえる詩情も乏しい。1作目の夜間撮影に代表される陶酔してしまうような瞬間が見られず、“普通の映画”になってしまった感は拭えない。

それでも(困ったことに)ブローリン、デル・トロ、シェリダンの御陰で目が離せない映画なのである。特に状況転じてデルトロが麻薬王の娘と逃避行する中盤からは俄然、牽引力が増す。殺気みなぎるデル・トロが垣間見せる父性にイサベル役イザベラ・モナーも呼応し、口の効けない農夫一家とのエピソードには神秘的な奥行きがあった。

第3弾も企画されているというが、ここはぜひ監督としての手腕も実証したテイラー・シェリダンに手掛けてもらいたい所だ。デル・トロ相手に充実のエミリー・ブラントが立ち向かう構図を見てみたいが、どうだろう。

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ボーダーライン ソルジャーズ・デイのポスター
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長内那由多のプロフィール画像

長内那由多

タマネギ畑が広がる北海道のド田舎で多感な思春期を過ごす。中学2年生で「恋人までのディスタンス」のジュリー・デルピーに恋をする⇒メインの更新は本館ブログへ移行しました。こちらでは劇場公開作についてたまにアップします。

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