映画『若おかみは小学生!』レビュー

ポスト宮崎駿

子供の視点から世界を描くのは巨匠・宮崎駿のトレードマークとも言える手法だが、本作の高坂希太郎監督がスタジオジブリ出身と聞いてなるほどと合点がいった。令丈ヒロ子の同名児童文学シリーズを映画化した本作は誰もが経験した子供時代の世界の不可思議さを瑞々しく描いている。自ずと宮崎御大の傑作『となりのトトロ』を彷彿とした人も多いのではないだろうか。

主人公は小学6年生の女の子“おっこ”。ある日、交通事故で両親を失ってしまった彼女は田舎で温泉旅館“春の屋”を営む祖母の元へと引き取られる。このイントロ部分から目線の高さが違う。大人が浸りたい感傷はどこにもない。おっこは淡々と(しかも一人で!)荷物をまとめ、両親亡き後の家を出ていく。泣きじゃくったり、振り向いたりもしない。だが小学6年生とは大人でも子供でもない境目にあり、気丈に頑張れてしまうものかも…とついつい僕も我が身を振り返ってしまった。

花の屋には祖母の幼少期を知る男の子の幽霊ウリ坊や、客を呼び寄せる妖怪“鈴鬼”、謎の女の子の幽霊みよちゃんがいて、おっこは悲しむ間もなく日々を過ごし、若おかみ修行に励むことになる。少女に今を生きる力が宿るこの物語は『ミツバチのささやき』や『パンズ・ラビリンス』の系譜にあり、そして『となりのトトロ』に連なる。劇中に登場する父親が揃ってインテリで、糸井重里風の芝居をしている所にも宮崎イズムの継承が見て取れた。ポストジブリがさけばれて久しいが、直系という意味では高坂監督が最も近いのではないだろうか。劇中、零細旅館扱いされる花の屋もぜひ行ってみたいと思わせる魅力的な描写力だった。

吉田玲子の脚色はエピソードをやや詰め込み過ぎだが、終わる頃には「おっこが大人になったらどんな女将になるんだろう」とすっかりキャラクターに愛着が湧いてしまった。そんな余韻も御大譲りな好編である。

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若おかみは小学生!のポスター
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長内那由多のプロフィール画像

長内那由多

タマネギ畑が広がる北海道のド田舎で多感な思春期を過ごす。中学2年生で「恋人までのディスタンス」のジュリー・デルピーに恋をする⇒メインの更新は本館ブログへ移行しました。こちらでは劇場公開作についてたまにアップします。

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