映画『クレイジー・リッチ!』レビュー

アジア版『ブラックパンサー』

大旋風である。ワーナーブラザーズの製作ながらオールアジアンキャストで固められた本作が全米興行収入で3週連続のナンバーワンヒットを記録したのだ。これまでハリウッドでは“アジア人の主演する映画なんてどうせヒットしない”と見向きもされず、最近でも日本発の世界的人気コミックを原作とした『ゴースト・イン・ザ・シェル』の主演にスカーレット・ヨハンソンが起用されるという“ホワイトウォッシュ”が問題となっていただけに本作の成功の意義は大きい。これまでハリウッドが何度もやってきた直球王道ラブストーリーも多様性を取り入れた事で全く新しい物語となった。それは今春、やはりオール黒人キャストでスーパーヒーロー映画に新たな地平をもたらした『ブラックパンサー』とも同様だ。

オープニングから楽しい。軽快なスコアとテンポの良い演出、美男美女揃いのキャストに舞台となるシンガポールのゴージャスなランドスケープが加わってハリウッド映画ならではの華やかさだ。
もちろん単にハリウッドの方程式をアジアに当てはめただけの映画ではない。レイチェルとエレノアの確執の背景にはチャイニーズアメリカンとネイティヴチャイニーズという似て非なるアイデンティティの差異がある。“民族はこうあるべき”とステレオ化されたネイティヴの価値観からすれば、個人主義のアメリカナイズは到底受け入れられず、一方で移民をルーツに持つ多くのアメリカ人は未だアメリカでよそ者扱いされる居心地の悪さと、なおかつネイティヴではない事の疎外感もつきまとってきたのではないだろうか。他者との違いばかりが取りざたされる現代において苦境を乗り越え、自分を貫き通すカップルの結末はわかっていてもキュンとしてしまった。2018年の今、生まれるべくして生まれた映画である。

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クレイジー・リッチ!のポスター
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長内那由多のプロフィール画像

長内那由多

タマネギ畑が広がる北海道のド田舎で多感な思春期を過ごす。中学2年生で「恋人までのディスタンス」のジュリー・デルピーに恋をする⇒メインの更新は本館ブログへ移行しました。こちらでは劇場公開作についてたまにアップします。

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