映画『クワイエット・プレイス』レビュー

直下の住民がメンヘラでしまいにゃこっちもメンヘラになった話

ある日マンションの管理会社から「下の階の住人が深夜騒音に悩まされているとの報告を受けお電話さしあげました。××さんは深夜音を出していないでしょうか?生活パターンは?ご当人はその音に悩まされて続け精神的に追い詰められている」てな電話があった。身に覚えがないにしても深夜に帰宅していることは確かだったので、自分がその騒音とやらの出処、犯人扱いされているのを直感した。さらに”精神的に追い詰められている”と言う論法にもはや「被害者を追い詰めた犯人は貴様に違いない」と言う内実が込められていると感じた私は、恐縮して謝っておけば丸くおさまったのかも知れないが、根拠のないことに謝る気はさらさらなくやや無気に反論せざるを得なかった。事実止むを得ず深夜帰宅しても隣接部屋の住民が眠れないほどの騒音を恒常的にたててなどいない。「ご本人は真摯に事態を受け止めていると伝えておきます」といつの間にやら下手人に仕立て上げられた挙句、管理会社は何号室の者か教えられないと突っぱねてきたので、件の「被害者」は「見えない敵」となった。その日から見えない敵を相手に、物音ひとつ出すことも許されないまま抜き足差し足の深夜生活がはじまるも、階下の「被害者」は私を深夜まで働く勤労者とは見なさずに生活を脅かす単なる騒音装置としかみなさず、四六時中監視しているに違いない、不眠症になったのは深夜まで耳をそばだてて神経を研ぎ澄まして上げ足をとるために違いないと、音によって双方の神経の消耗戦と言う妄想のつばぜり合いとなった。こうなるともはや精神的に追い詰められているのは私の方だ。音をたてない生活に慣れてくると苦情のことも忘れ気も緩み、ある日スプーンを床に落としてしまい、はっと我に返った。見えない敵を忘れていた。数日後再び電話があり恐怖が再開した。
これらに似た経験を持つ方は、この作品は実感的にその恐怖が等質であると感じるに違いない。

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クワイエット・プレイスのポスター
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弐個 四

本棚に並べたDVD画像をSNSで自慢げにさらすような大人にはなりたくない。

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