映画『クレイジー・リッチ!』レビュー

“あなた”の人生の物語

 “あり得ないほどお金持ち”の彼氏と、母子家庭の庶民派ヒロインとの格差恋愛。そんなバブリーな恋物語に付いて行けるのか……と腰も引け気味だったが、いい意味で予想を裏切られる快作だ。

 堅実な恋人ニックとの関係も順調なレイチェルは、とある結婚式を機に、彼の故郷シンガポールへと旅立つ。家族の話題を微妙に避けてきたニックの実家は、実はアジア有数の大富豪。同じ中国人とはいえ、NY育ちで若き経済学の教授としてバリバリ働くレイチェルは、家庭を重んじ伝統的な価値観を守り続けるニックの母エレノアには、“アメリカ娘”と疎んじられる。さらに、ふたりの恋愛を快く思わぬセレブ気取りの女性陣からは、『ゴッドファーザー』(72)の1場面のような悪質な嫌がらせまで受けてしまう。

 自身を見失いかけるレイチェルに、ニックは「君と付き合っている時の自分が好きだ」と最高のノロケ文句を吐く。ひとの本質は容易には変わらないが、垣間見せる長所や短所の比率は相手によって変動し、相性次第では格差だって乗り越えられるかもしれない。頑なに同じ土俵に上がろうとしないエレノアに、レイチェルは“これが私の生きる道”と宣言するがごとく、公正な大一番で挑む。

 キャストすべてをアジア系で固めることで、多様性も際立つ。『オーシャンズ8』(18)も記憶に新しいオークワフィナと、『ハングオーバー』シリーズでお馴染みのケン・チョンの韓国系コンビが、超独創的なファッションセンスで場をさらう面倒見のよい父娘を好演するほか、アクションにも長けたマレーシア系のミシェル・ヨーが貫録たっぷりに演じるエレノアをも黙らせる“おばあさま”役に、国際的に活躍してきた大ベテランのリサ・ルーなど、贅沢な布陣も光る。
 
 誰もが話せばそれなりに長くなるルーツに思いを馳せ、いまを生きる奇跡を噛みしめる。きらびやかさに普遍性を秘めた、味わい深い人間ドラマである。

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クレイジー・リッチ!のポスター
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服部香穂里のプロフィール画像

服部香穂里

映画界の末端で、浮草のように漂うております……。

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