映画『カメラを止めるな!』レビュー

映画の時間

映画はとある廃墟で行われているゾンビ映画の撮影現場から始まる。遅々として進まぬ撮影に怒りを爆発させる監督。ゾンビ役俳優をどつき、アイドルまがいの女優に怒鳴る「おまえのやってる事はぜ~んぶ嘘なんだよ!」「(感情は)出すんじゃない。出るんだよ!」。そこへ突如、本物のゾンビが出現。1人、また1人とクルー達が犠牲となっていく。「これだよ、これ!」と“本物”に歓喜する監督。彼はこの惨状を収めるべく、カメラを回し続けるのだが…。

…と、おそらくこうして書いている僕の文章が一番面白いハズだ。なぜなら俳優達の芝居は間延びし、スタッフは見切れ、ストーリーは支離滅裂。野心的な長回しもオペレーションがされておらず、グダグダな仕上がりなのである。映画館内には「ダメだこりゃ」と虚しい空気が立ち込めていた。

おっと、ここまで。
あなたがこの映画を見に行く予定ならこれ以上、前情報を入れない事をオススメする。
なぜならこの冒頭で感じた失望感は全て大いなるギャグの前振りなのだ。『カメラを止めるな!』はゾンビ映画からなんと三谷幸喜も顔負けの楽屋裏コメディへと大転調する。もちろん、映画を見続けてきた人は“このネタならもっと死ぬほど笑わせてくれ”と言うところだが、本作最大の功績は“邦画ってこんな感じでしょ?”という閉塞感をぶち破った事にあるのではないだろうか(そして世界にはもっと面白い、素晴らしい作品がたくさんある事も知らしめてくれている)。本作のヒットをきっかけにより多くの才能に陽の目が当たる事を期待したい。

それにしても全編に渡って“このカメラは誰が撮っているのか=映画とは何か”という映画哲学もつきまとっている。このシネフィル気質もまさか計算の内か?まぐれ当たりと侮れない映画である。

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カメラを止めるな!のポスター
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長内那由多のプロフィール画像

長内那由多

タマネギ畑が広がる北海道のド田舎で多感な思春期を過ごす。中学2年生で「恋人までのディスタンス」のジュリー・デルピーに恋をする⇒メインの更新は本館ブログへ移行しました。こちらでは劇場公開作についてたまにアップします。

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