映画『ミッション:インポッシブル フォールアウト』レビュー

マゾっ子トムくん

 トム・クルーズの“アクション俳優化”が止まらない。『レインマン』(88)、『マグノリア』(99)、『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』(08)など、振れ幅の大きな演技に魅了されてきた身としては複雑な気持ちではあるが、いわゆるマッチョとはかけ離れた体躯に、充実のキャリアで培った深い内面理解を併せた身体表現は彼にしか到達し得ないものゆえ、唯一無二の領域を自ら開拓したことを、素直に賞賛するべきかもしれない。

 新生トムの原点ともなった『ミッション:インポッシブル』シリーズの第6作で、その傾向はさらに顕著となる。20年以上も前の第1作と比べ、年波は確実に寄っているはずだが、トムふんするイーサン・ハントに課せられるミッションは、回を重ねるごとにハードになる。前作『ローグ・ネイション』(15)から続投の、エンターテインメント性を徹底的に探究するクリストファー・マッカリー監督の無茶ぶりにも嬉々として応え、アドレナリン全開で過激なアクションを次々こなすトム。とりわけ、『ターミネーター2』(91)の超絶カーチェイスを、舞台を空中に転じたかのようなヘリコプター同士の死闘は、食いしばる歯、握りしめるロープの音まで聞こえんばかりの臨場感で、「お笑いウルトラクイズ!!」の芸人も真っ青のマゾヒストぶりには、驚嘆を通り越して笑いさえ込み上げてくるほど。日本でも大々的に報道された撮影中のアクシデントも、完全無欠ではない主人公とトムとの一体感や役のリアリティをも増す結果となり、正に“ケガの功名”の効果を上げている。

 さらに、せっかくの二枚目なのに、近年は恋愛モードからは遠ざかっていた感のあるトムだが、シリーズの集大成的な今回、イーサンの人生に光と影をもたらしてきた女性ふたりが初めて顔を揃えるのも、胸がざわめく。マンネリを逆手にとり、その遥か上をいくトム=イーサンの次なる活躍が、早くも待ち遠しい。

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ミッション:インポッシブル フォールアウトのポスター
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服部香穂里のプロフィール画像

服部香穂里

映画界の末端で、浮草のように漂うております……。

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