映画『サバービコン 仮面を被った街』レビュー

未来は子供達に宿る

1950年代アメリカ、閑静な住宅地“サバービコン”にとある黒人一家が引っ越してくる所から映画は始まる。
地域の白人達は「犯罪が増える」「黒人がいないから土地を買ったのに」と侃々諤々だ。彼らは連日、出ていけと抗議のデモを繰り返し、ついには家の周りを“壁”で取り囲んでしまう。

やれやれ、ウンザリだ。実際の事件に材を取ったというが、アメリカは本当に何も変わっていない。一軒隣りでは保険金目的の殺人事件が繰り広げられているが、住民達は自分の腐臭で事の醜悪さに気付いていない。

ジョージ・クルーニーの監督第6作は黒人排斥運動と保険金殺人という2つの事件を並列して描く。劇的な交錯が一切ない2つのプロットは脚本を手掛けたクルーニーと盟友グラント・ヘスロヴ、そしコーエン兄弟がまるで各自の作風で分担したかのような作りだ。聞けばもともとあった黒人排斥のプロットにコーエン兄弟が保険金殺人のパートを書き足したという。『ファーゴ』よろしく雪ダルマ式で大量殺人に発展するが、彼らならではのブラックユーモアをクルーニーは生真面目に演出している。マット・デイモン、ジュリアン・ムーアにも愛嬌ナシ。現在の度し難いアメリカの醜さはかねてから内包してきたものだと看破しているのだ。そんな怒りを込めた批評をクルーニーは偏愛するクラシック映画のトーンで彩っており、時代かかった音楽アレクサンドル・デスプラ、撮影ロバート・エルスウィットの試みは面白く、とりわけジュリアン・ムーアが演じたローズに訪れる顛末は素晴らしいセリフも相まって出色のシーンであった。

希望はどこにあるのか?
クルーニーは子供達に未来を託す。事件の全容を知ってしまった息子ニッキーを演じる子役ノア・ジュプス君は実質上の主役として複雑な心理演技を見せ、映画を牽引する。クルーニーも彼に注力して演出している事が伺えた。彼らしい生真面目さと懐古趣味の1本だ。

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サバービコン 仮面を被った街のポスター
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長内那由多のプロフィール画像

長内那由多

タマネギ畑が広がる北海道のド田舎で多感な思春期を過ごす。中学2年生で「恋人までのディスタンス」のジュリー・デルピーに恋をする⇒メインの更新は本館ブログへ移行しました。こちらでは劇場公開作についてたまにアップします。

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