映画『ブラックパンサー』レビュー

見よ、ワカンダは赤く燃えている

舞台となるブラックパンサーの祖国ワカンダ王国のランドスケープに目を見張る。アフリカの辺境にある途上国というのは表の顔。キャプテンアメリカのシールドにも使われている宇宙金属ヴィヴラニウムの採掘によって超高度の発展を遂げた未来国家というのが真の顔だ。アフリカ民族の伝統にSFを重ね合わせた“アフロフューチャリズム”はようやく到達した『ブレードランナー』以後の未来像であり、本作の大きな見所である。
奴隷も差別の歴史も持たないワカンダはまさにアフリカ系にとっての理想郷であり、その楽園を守るべく外界とのつながりを断ってきた。そんな王国の長となったのがブラックパンサー=テイ・チャラなのである。

一方、彼に戦いを挑む悪役キルモンガー=エリックは幼い頃アメリカに渡ったワカンダ生まれの青年だ。映画の冒頭、事件の発端は60年代に黒人解放を訴えた急進的政治組織“ブラックパンサー”誕生の地オークランドであり、時代設定はLA暴動の1992年だ。言わばキルモンガーは現実の差別に直面してきた側であり、その憤怒との対決がテイ・チャラに世界の広さを知らせ、最後の対話と協調の言葉に至るのである。それこそ本作が現在(=いま)の映画である証ではないか。

またしてもマーヴェルはスーパースターを生んだ。本作はヒーロー映画の歴代興行収入記録を更新、頂点に立った。早くも来月に控えるヒーロー総結集映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』が霞んでしまわないかと心配になってしまうくらいだ。ワカンダ、フォーエバー!!

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ブラックパンサーのポスター
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長内那由多のプロフィール画像

長内那由多

タマネギ畑が広がる北海道のド田舎で多感な思春期を過ごす。中学2年生で「恋人までのディスタンス」のジュリー・デルピーに恋をする⇒メインの更新は本館ブログへ移行しました。こちらでは劇場公開作についてたまにアップします。

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