映画『グレイテスト・ショーマン』レビュー

大衆娯楽とは

1800年代に活躍した伝説的興行師P・T・バーナムを描く本作は彼のとりとめのないコレオグラフィ同様、盛り沢山の映画だ。
今や現存する最後のミュージカル映画スターとなったヒュー・ジャックマン扮するバーナムは深窓の令嬢チャリティと恋におち、駆け落ちする。箱庭感あるプロダクションデザインの世界でも血の通った存在感を見せるチャリティ役ミシェル・ウィリアムズの歌声は貴重であり、彼らの夫婦愛が映画の縦軸だ。

やがてバーナムは小人や肥満、多毛症等のフリークスを集めて見せ物小屋をオープンする。多様性が叫ばれる今日、生まれながらの容貌のために世間から疎まれてきた彼らが『This is Me』と歌う場面は本作のハイライトであり、ジャックマンを筆頭にした“地上最大のショウ”の熱量は大いに魅せてくれる(そりゃヒュー・ジャックマンが毎公演、歌って踊ってくれるサーカスなら連日超満員になるわな!)。

だが、富と名声を求め、奇形を見世物にして金儲けを企むバーナムの俗悪さにジャックマンは脂身が足りな過ぎた。一般大衆からの金を得られても批評家や知識層からの支持を欲したバーナムはヨーロッパのオペラ歌手ジェニーの一大ツアーをプロデュースし、大成功を収める。ここで映画が内省する“大衆娯楽、大衆芸術とは何か?”という問いかけこそバーナムの歪さを象徴する本作のテーマだろう。サーカスの花形ブランコ乗りに扮したゼンデイヤ、ジェニー役レベッカ・ファーガソンが好演するナンバーの対照的な個性もよりテーマを際立たせている。

移り気な演出は複雑さを垣間見せた所でトランプ時代にあるべき融和を説き、大団円を迎えてしまう。この臆面のなさ、“イイとこ取り”こそバーナム流なのかも知れない。彼を評伝するために自らも彼の興行のような仕上がりとなった本作は全米でロングランヒットを記録。稀代の興行師の魔性は改めて実証された形となった。

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グレイテスト・ショーマンのポスター
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長内那由多のプロフィール画像

長内那由多

タマネギ畑が広がる北海道のド田舎で多感な思春期を過ごす。中学2年生で「恋人までのディスタンス」のジュリー・デルピーに恋をする⇒メインの更新は本館ブログへ移行しました。こちらでは劇場公開作についてたまにアップします。

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