映画『ぼくの名前はズッキーニ』レビュー

すべての子供達に

時折、僕たちは手法が物語やジャンルのために存在していると錯覚してしまいがちだが、クロード・バラス監督の『ぼくの名前はズッキーニ』を見るとそんな既成概念は覆されてしまう。

ストップモーションアニメはティム・バートンやヘンリー・セレック、さらにはヤン・シュヴァンクマイエルらによってファンタジーの、それもどちらかと言うと悪夢的世界の表現技法として認知されてきたが、バラスはデフォルトされた人物画に対し物語のディテールを描き込む事でリアリズムを追及している。孤児院での生活、その日の気分を表すカレンダー、植物であふれた部屋、カフカの『変身』…。予備知識一切なしで鑑賞に挑んだ僕は冒頭、ネグレクトの母子家庭で起こる悲惨な事件に目を見張ってしまった。

不慮の事故で母を失った少年ズッキーニは児童養護施設に引き取られる。様々な理由でここに集められた子供たちは移民国家フランスの縮図でもある。不安と孤独の日々は間もなく過ぎ去り、子供ならではの無邪気さと明日を生きる強さがズッキーニを支え、やがて大人びた少女カミーユとの運命的出会いが訪れる。

パペットとは思えない、表情豊かな子供たちの愛らしさに頬が緩む。バラスの目標はストップモーションアニメでも子供達の生きた表情を捉え、実在感を得る事にあったハズで、その試みは成功している。世に生まれた子供は皆、愛されるべきであるという力強いメッセージは観る者の心を捉え、僕は彼らの幸せがいつまでもいつまでも続くようにと願ってやまなかった。

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ぼくの名前はズッキーニのポスター
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長内那由多のプロフィール画像

長内那由多

タマネギ畑が広がる北海道のド田舎で多感な思春期を過ごす。中学2年生で「恋人までのディスタンス」のジュリー・デルピーに恋をする⇒メインの更新は本館ブログへ移行しました。こちらでは劇場公開作についてたまにアップします。

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