映画『女神の見えざる手』レビュー

オピニオンリーダー・チャステイン

米国に遅れること1年の日本公開となったが、相次ぐ銃乱射事件によって残念ながらタイムリーな作品となってしまった。銃規制法案可決に向けて暗躍する政界ロビイストを描いたポリティカルドラマだ。

乱射事件が起きる度に銃規制は叫ばれてきたがその都度、銃擁護派によって覆されてきた。自衛のために所持する銃を奪う事は憲法に記された個人の自由を侵害する事になる。この捻じれに捻じれたジレンマを打開するためにはお花畑の理想論ではダメだ。ありとあらゆる卑劣な手段を尽くして勝利を掴み取るダーティーヒロインが主人ミス・スローンである。

ジェシカ・チャステイン演じるこのヒロインの造形だけで映画は推力を得ている。食事は近所の中華屋、恋人は持たずに風俗で済ませ、寝る間が惜しく覚醒剤が手放せない。これまで男優が演じてきた役柄に躁病的な神経質さとテンションを与えたチャステインの現代的解釈は際立っている。彼女の演技は役柄の“性差”を破壊しており、ハリウッドの配役における性別差別を打破せんとするその姿勢はオピニオンリーダーの面目躍如と言っていいだろう。銃乱射事件以前に今年、ハリウッドが揺れたセクハラ騒動を前にして非常に意義があり、現代的かつ画期的である。

クライマックスはやや劇画調だが、あまりにもハードボイルドで渋いチャステインに『評決』のポール・ニューマンすら彷彿とした。彼女の演技によってテーマ以上の深みを持った、“ネオウーマンリヴ”を形成する1本である。

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女神の見えざる手のポスター
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長内那由多のプロフィール画像

長内那由多

タマネギ畑が広がる北海道のド田舎で多感な思春期を過ごす。中学2年生で「恋人までのディスタンス」のジュリー・デルピーに恋をする⇒メインの更新は本館ブログへ移行しました。こちらでは劇場公開作についてたまにアップします。

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