映画『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』レビュー

許されざる者

2011年の『創世記』から始まる新シリーズの第3弾。第2作目『新世紀』から登板したマット・リーヴス監督が再びメガホンを取り、1968年のオリジナル版が持つ批評精神を継承した堂々たる完結編だ。

ヘイトの風が吹き荒れる今、“大佐”ら人間たちに投影されているのが排外主義、ファシズムなのは一目瞭然だ。
彼らは狂信的な軍閥コミュニティであり、猿達“異者”はおろか、猿インフルの後遺症によって失語症となった同じ人間たちすら抹殺していく。本作にはナチスドイツ、ホロコーストの記憶も投影されており、障害者は殺され、ゴリラは恐怖から人間へ加担し、猿達は“動物園”と呼ばれる収容所で虐待を受ける。彼らが作らされているのは“壁”だ。

本作では猿達、シーザーこそが理想像として純化されている。
前作で“猿は猿を殺さず”という誓いを破り、戦争を誘発したコバを殺めたシーザーの中には今もなお、同族殺しという許されざる罪悪がつきまとい、彼を苛む。ヘイトの時代、果たしてシーザーは憎しみを捨てる事ができるのか?大佐への復讐の道中、精神を病んだ猿バッド・エイプを助け、さらには失語した人間の少女ノバを救う彼の中で変化が訪れる。ほとんど聖人の如く苦難に耐え、一族を“約束の地”へと導こうとするシーザー役アンディ・サーキスの重厚な演技は本作のグレードを1つも2つも上げ、歴史劇のような風格をもたらした。さすがの巧さを見せる大佐役ウディ・ハレルソンとの対決も見どころだ。

多分にジェリー・ゴールドスミス御大を意識したマイケル・ジアッキーノのパワフルなスコア、マイケル・セレシンの陰影濃い撮影を得てマット・リーヴス監督は次のステージに立った感がある。この演出力、ストーリーテリングでオリジナルのTVドラマシリーズを見てみたいのだが、どうだろうか。

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猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)のポスター
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長内那由多のプロフィール画像

長内那由多

タマネギ畑が広がる北海道のド田舎で多感な思春期を過ごす。中学2年生で「恋人までのディスタンス」のジュリー・デルピーに恋をする⇒メインの更新は本館ブログへ移行しました。こちらでは劇場公開作についてたまにアップします。

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