映画『エイリアン コヴェナント』レビュー

創られし者、創りし者

中盤のドス黒い、邪悪な気配は何なのだ。
新型エイリアン“ネオモーフ”の襲撃から主人公らを救ったアンドロイドのデヴィッド(マイケル・ファスベンダー)は、かつてその惑星を支配していた宇宙人“エンジニア”の街へと彼らを導く。

古城のような研究室の禍々しい美と狂気は、モンスター映画を期待した観客を戦慄させる。ロウソクの灯で撮られたような薄暗いライティング、内臓感覚あふれるモンスターの標本、そしてエイリアンの原案者H・R・ギーガーの直筆を思わせる寄生の過程を描いたスケッチ。そこで対面するデヴィッドとウォルターという、2人のファスベンダーの異様。本作を覆う死臭は実弟トニーの自殺後、リドリーが発表した『悪の法則』を彷彿とさせるものがあり、ファスベンダーという符合がリドリーの抱える諦念、死生観を体現しているようにも思えた。

一方で本作は創造者と創造物による支配と抵抗の物語にも見える。『プロメテウス』から始まるこの新シリーズにおいてリドリーは長年の謎とされてきたスペースジョッキーの正体、そしてエイリアン誕生の秘密を明らかにし、暗黒の神話性をもたらして不可侵のコンテンツへと再定義しようとしているように見える。

だが一度、産み落とされた創造物は創造者の意志を超える。
ウェイランドに作られたデヴィッドが自由意志を得たように、リドリーが再定義した『エイリアン:コヴェナント』はこれまでのシリーズとは違う、別の暗黒宇宙へと漕ぎ出した(不思議なことにリドリーのもう1つの代表作『ブレードランナー』にも緩やかな弧を描きながらかすっていく)。果たしてこれは僕らが期待していたエイリアンシリーズなのだろうか?

その結論は企画されているさらなる続編に持ち越されるだろう。
デヴィッドは『エイリアン』第1作目には存在しない。彼もまた自ら生み出した創造物に超越される運命が待ち受けているからだ。

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エイリアン コヴェナントのポスター
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長内那由多のプロフィール画像

長内那由多

タマネギ畑が広がる北海道のド田舎で多感な思春期を過ごす。中学2年生で「恋人までのディスタンス」のジュリー・デルピーに恋をする⇒メインの更新は本館ブログへ移行しました。こちらでは劇場公開作についてたまにアップします。

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