映画『アウトレイジ 最終章』レビュー

皆殺しの悪魔

 『その男、凶暴につき』(89)で鮮烈なデビューを飾った、北野武監督。”ほんまに、撮りたいもんを撮ってんのん?”と、首を傾げたくなる低迷期を乗り越え、新たな代表作として強烈な印象を放った人気シリーズの、第3作にして完結篇である。

 登場人物すべてが、揃いも揃ってワルばかりの本シリーズではあるが、そのタイプは千差万別。ビートたけしふんする大友は、かつての仲間や身内らの容赦ない裏切りに遭い、何度も使い捨てにされかけながらも、しぶとく生き抜いてきた、昔気質の極道である。世知辛い現実をリセットするがごとく、韓国の済州島で気ままに過ごしていたが、関東も手中に収めつつある関西の巨大組織・花菱会の幹部(ピエール瀧、コメディ・リリーフを好演)の起こしたトラブルが発端となり、大友の意地とプライドをかけた最後の闘いが幕を開ける。

 ”殺し方の見本市”とでも呼びたくなる、バラエティ豊かな悪党どもの死にざまが生み出す、超悪趣味な黒い笑いは、今回も健在。その一方で、北野監督の初期の作品に一貫してあった、暴力をふるうことでしか生を実感できないアウトローたちの、バイオレンス描写に漂う哀感のようなものまでもが復活しているのは、嬉しい限り。ホームグラウンドであったはずのお笑い界も、新しい居場所として国際的な名声まで提供してくれた映画界も、急激な変化を遂げている今、愚直な美学を貫き通し、自らの手で落とし前をつけようと奔走する、時代おくれのヤクザ者に対する悲痛なシンパシーが、全篇からにじみ出す。

 『TAKESHI'S』(05)でも試みようとしていた(が、不完全燃焼に終わった)ビートたけしと北野武という、表裏一体のふたつの顔への考察。10年以上の歳月を経て、両者が幸福な関係を築いて重なり合い、シリーズを最高のかたちで締めくくった。

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アウトレイジ 最終章のポスター
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服部香穂里のプロフィール画像

服部香穂里

映画界の末端で、浮草のように漂うております……。

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