映画『ベイビー・ドライバー』レビュー

『ラ・ラ・ランド』へのアンサーソング?

ようやく、ようやく飛び出したエドガー・ライト監督の本塁打『ベイビー・ドライバー』は途中、多少の蛇行はあるものの、冒頭からアクセル全開で最高のドライブに連れて行ってくれる大快作だ。

巻頭、ベルボトムズをバックに繰り広げられる銀行強盗からの逃走シーンはまるで『ラ・ラ・ランド』のカーアクション版であり、あの群舞をまるで一人で踊るかのような主演アンセル・エルゴートのファニーでキュートなパフォーマンスはスター誕生の瞬間である。“タランティーノ以後”の監督であり、『グラインドハウス』でも組んだ言わば舎弟でもあるライトは元来、既成ポップスを使った心理描写が多かったが、本作ではそれがほぼ全編に渡って採用され、カット割りから俳優のミザンスまで全てが音ハメされている。『ベイビー・ドライバー』はまさに“ミュージカル・カーアクション映画”なのだ。

幸福なエネルギーとして画面から発散されるのは作り手の音楽愛だ。車を運転する人なら誰でも“飛ばす曲”は持っているだろう。『ブライトン・ロック』について熱く語り合うエルゴートとジョン・ハムの姿には誰もが頬を緩めること請合いだ。

ベイビーの良心とも言える天使のようなリリー・ジェームズには誰もが恋せずにいられなくなるだろう。今年最高のスクリーンカップルである2人の初デート先は近所のコインランドリー。そこでは『ラ・ラ・ランド』に登場した赤、青、黄の原色ドレスが踊るように洗濯されているではないか。製作時期から考えると関連性は不明だが、ハリウッドミュージカルを復古した『ラ・ラ・ランド』に対するアクション映画ジャンルからの呼応にも見えた。この偶発的関連性も映画の面白いところである。

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ベイビー・ドライバーのポスター
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長内那由多のプロフィール画像

長内那由多

タマネギ畑が広がる北海道のド田舎で多感な思春期を過ごす。中学2年生で「恋人までのディスタンス」のジュリー・デルピーに恋をする⇒メインの更新は本館ブログへ移行しました。こちらでは劇場公開作についてたまにアップします。

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