映画『ワンダーウーマン』レビュー

To The Wonder

今年最大のヒットとなった『ワンダーウーマン』は分断とレイシズムに揺れる2017年に現れるべくして現れた大快作だ。『モンスター』以来、実に13年ぶりの劇場長編となったパティ・ジェンキンス監督はワンダーウーマン=ダイアナを第一次大戦時に放り込み、フェミニズムの歩みを今一度辿りながら、人類愛とも言うべきヒューマニズムに達する。
1910年代といえば女性の参政権運動が活発化し、その一方で男達の傲慢な論理で始まった戦争に戦車、機関銃、そして毒ガスといった大量破壊兵器が投入され、人類は未曽有の破滅の危機にあった時代だ。ドイツ軍の新型兵器を破壊すべくワンダーウーマンは塹壕のハシゴを上り、無人地帯(No Man's Land)へと歩み出す。
女性の社会進出が認められなかった時代、激しい銃火のような差別と偏見に晒された彼女らを時に支えた人達があった。凄まじい砲火を受け止めるダイアナのため、スティーブ率いる落ちこぼれ部隊が障害を排除していく。

彼らの描写がいい。ユエン・ブレムナー演じる兵士はスナイパーにも関わらず臆病さから最後まで銃を撃つことができない。ダイアナはそれを「でも歌が上手いんだからいいじゃない」と認める。あらゆるマイノリティの混合である部隊の顔ぶれを見れば、彼女が女性性を超えた人類愛の象徴である事は自明だろう。男におもねる事なく、「快楽を得るために必ずしも男は必要ない」と言ってのけてしまうのも面白い。

明らかにザック・スナイダーの意向が入っているであろうクライマックスの大味なアクションシーンについては目をつぶろうじゃないか。本作の大成功によってジェンキンス監督は続編における最大限のクリエイティブ・コントロールを得たハズだ。スティーブの言葉を噛みしめよう。「今日はオレが守る。未来は君が守れ」。
先人たちのこの意志の下、ついに『ワンダーウーマン』は生まれたのだ。

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ワンダーウーマンのポスター
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長内那由多のプロフィール画像

長内那由多

タマネギ畑が広がる北海道のド田舎で多感な思春期を過ごす。中学2年生で「恋人までのディスタンス」のジュリー・デルピーに恋をする⇒メインの更新は本館ブログへ移行しました。こちらでは劇場公開作についてたまにアップします。

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