映画『スパイダーマン ホームカミング』レビュー

ピーター・パーカー ホームカミング

 原作コミックでは、スパイダーマンが田舎町でスイングするのに十分な高さの建物を見つけられず、徒歩で移動するという珍妙なエピソードがあるという。本作でも仕方なく草原を疾走するスパイダーマンの姿が見られるが、これがなかなか興味深い。

 このシーンをはじめとして、今回は広場にそびえ立つワシントン記念塔や海に浮かぶフェリー、飛行機の上や挙句の果てには砂浜での戦いなど、NYの摩天楼に代表されるようなスパイダーマンのお家芸とも言える豪快なスイングをあえて封じる見せ場が数多く用意されている。

 大切な仲間が今にも落下しそうなエレベーターの中に閉じ込められた。どうしよう。船が真っ二つに割れて沈没しそう。どうしよう。敵がトニー・スタークさんの荷物を載せた飛行機を襲撃しようとしている。どうしよう。得意技を封じられたことで、スパイダーマンは知力と肉体を限界まで駆使し、状況の解決を迫られる。この展開が画的な面白さに、そして中の人であるピーター・パーカーの成長物語として存分に生かされている。

 スパイダーマンは既に2度もシリーズ化され、世界中の観客がその人となりを熟知しているキャラクターだ。そこにどうやって新味を持たせ、新たなフランチャイズとしてリブートさせるかが本作の鍵であった。絶好調のマーベルが出した答えは、クモに咬まれた経緯やベンおじさんとの別れなどお馴染みのエピソードを廃し、あえてスパイダーマンからスパイダーマンの個性を引き算することでピーター・パーカーとしての物語を浮かび上がらせ、逆算的にオリジンを描くという大胆不敵なものである。これはピーターがどのようにしてスパイダーマンとして活躍するようになったのかではなく、スパイダーマンがどのようにしてピーターの人生に溶け込むかについてのお話なのだ。だからこそ「ホームカミング」というタイトルは大きな意味を持つ。

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スパイダーマン ホームカミングのポスター
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奥 直人

映画暦15年。思いのままをレビューにぶつけていきます。

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