映画『オクジャ okja』レビュー

アメリカ具材の韓国料理

冒頭、まるで國村隼が出てきそうな韓国の寒村で少女と巨大な怪物、スーパーピッグのオクジャが戯れている。食糧難解決を目的に米国企業が遺伝子操作で生み出したこの家畜は、『グエムル』の放射性物質で突然変異した魚の姉妹みたいなものだ。そこへ現れるのがまるでムツゴロウがクリスタルメスでもキメたかのようなハイテンションの動物学者役ジェイク・ギレンホール。この瞬間、『オクジャ』は新しい時代の到来を告げる。Netflixという1つの配信サイトを通じて韓国の鬼才ポン・ジュノと米の気鋭俳優達がコラボレーションし、それを僕ら全世界の映画ファンが同時に目撃できるという新しい時代だ。

前半、市街地で繰り広げられるヒロイン、企業、そして動物愛護団体によるオクジャ争奪戦はポン・ジュノらしい映画的動体運動の連打が観る者の快楽中枢を刺激し、映画は早くもピークに達する。同じカットは2度使わない制約でもあるかのような奇抜なカメラワークの元でポール・ダノ、リリー・コリンズら米俳優達も旨味を放つ。
中でも一番楽しんだのは製作総指揮まで買って出たティルダ・スウィントンだろう。世界で唯一、自分を醜女に撮るポン・ジュノの前で演技巧者ぶりが光る一人二役だ。

ところが後半、物語がアメリカに移ると不思議なことに前半の疾走感が損なわれる。前述のアクションシークエンスに匹敵する見せ場がないのも原因の1つだが、米俳優たちがアメリカにいるよりも韓国にいた方が活気的に映るのはポン・ジュノの地の利だろう。後半はトリッキーなカメラワークも鳴りを潜め、「外国人監督の映画記憶によるアメリカ映画」と言うべく凡庸な風景に留まっている。
ファンとしてはハリウッド進出後、韓国へ戻って『お嬢さん』を撮ったパク・チャヌクのように、そろそろホームグラウンドで本塁打を打って欲しいところだ。世界中の俳優たちも喜んで韓国に飛び込むだろう。

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オクジャ okjaのポスター
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長内那由多のプロフィール画像

長内那由多

タマネギ畑が広がる北海道のド田舎で多感な思春期を過ごす。中学2年生で「恋人までのディスタンス」のジュリー・デルピーに恋をする⇒メインの更新は本館ブログへ移行しました。こちらでは劇場公開作についてたまにアップします。

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