映画『LOGAN ローガン』レビュー

帰ってきてと泣いたりしない

これは『X-MEN』の続編ではなく、いつか見たアメリカ映画の風景だ。
冒頭、酒に酔った髭面の男が現れ、ならず者ども半殺しにする。男の名はローガン。かつて“ウルヴァリン”と呼ばれた最強のミュータントだ。正義のミュータント軍団X-MENは滅び、タクシー運転手として糊口を凌いでいる。不死身の能力も衰えた。今はなけなしの金で船を買い、呆けてしまった師プロフェッサーⅩと海に出るのが目標だ。そこには夢なんてものはない。ただ漫然と、最期を迎えるためだけに海に出るのだ。

驚くべきことにジェームズ・マンゴールド監督はウルヴァリン完結編の舞台をアメリカの乾いた風に見出した。
傷ついた魂を持つ男、正義と悪、守るべき者、そして暴力とその代償。それらは西部劇からニューシネマ、クリント・イーストウッドに到るまで脈々と受け継がれてきたアメリカ映画の伝統的文脈であり、それがアメコミと融和し、この混迷の時代に今一度「ヒーローとは何か」を問う。悪の組織から逃げ出した子供たちが唯一信じたのはコミックスとなった『X-MEN』だった。混迷し、緩やかに衰退の一途を辿る現代において、信じる力を持った子供たちにこそ未来を切り開く逞しさは宿る。
ヒュー・ジャックマンはこれまでになく荒々しい演技で自身をさらけ出し、キャリア最高の名演である。嬉しいことにオーストラリアから渡ってきた直後、『X-MEN』第1作目で感じた若き日のイーストウッドとのデジャヴを僕は思い出し、それが本作をイーストウッド映画へと邂逅させている。

ある名作映画が引用されるクライマックスは涙なしでは見られない。
あまりに多様なフィルモグラフィのために見過ごされてきたが、ジェームズ・マンゴールドは伝統的アメリカ映画の継承者だったのだ。これほど深い余韻を残すアメコミ映画は『ダークナイト』以来である。

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LOGAN ローガンのポスター
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長内那由多のプロフィール画像

長内那由多

タマネギ畑が広がる北海道のド田舎で多感な思春期を過ごす。中学2年生で「恋人までのディスタンス」のジュリー・デルピーに恋をする⇒メインの更新は本館ブログへ移行しました。こちらでは劇場公開作についてたまにアップします。

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