映画『カーズ クロスロード』レビュー

華麗なるピクサーの歴史においては、アルバムの捨て曲のような1本。

 かつては最強のレーサーとして名を馳せたライトニング・マックィーンだったが、最新の技術と徹底した科学分析で急激に頭角を現してきた新世代のレーサーたちの後塵を拝し、栄光は過去のものとなっていった。

 マックィーンは新たなスポンサーとトレーナーのサポートを受け、引退を賭けた試合へ向けて特訓を開始する。栄枯盛衰、世代交代は世の習わし。しかし、泥臭くとも情熱に満ちた前世代を否定する新世代が本当に正しい存在なのだろうか。オールドファッションにも勝機は残されているのではないだろうか。いくつになっても諦めない不屈の精神を称えた、ディズニーらしい正統派の感動ドラマである。

 内容自体は脚本製作のお手本の様な仕上がりで、起承転結のハッキリとした物語の中で着実に伏線が回収されながら、大団円へと向かっていく。その安定感はさすがと言うべきだが、全てが予定調和な筋書きは物足りなさを覚えるのも事実。新世代のレーサーが終始血も涙もない嫌味な敵役として描かれたり、物語の構造上ある程度は仕方がないとは言え、描き込みの浅さや都合の良さが見え隠れするのも、爽やかさを意識した作りの中では十二分なマイナスポイントだ。

 また、ピッカピカのマックィーンの車体では、彼が時代遅れの年寄レーサーだということに説得力がないのも致命的。こういう細かいツッコミどころを許してしまうなんて、ピクサーの力はそんなもんじゃないだろう。

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カーズ クロスロードのポスター
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奥 直人

映画暦15年。思いのままをレビューにぶつけていきます。

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