映画『わたしは、ダニエル・ブレイク』レビュー

これは他人事なのだろうか?

 ニュースに目をやれば毎日世界中で悲しい事件や苦しい状況に置かれている人々が報道されている。もちろんその度に心は痛むし事態が改善されればと願うものの、やはり人間一番大事なのは自分自身。所詮は世界の喧騒など他人事であり、人々が火事で慌てふためく対岸の様子をぼんやりと眺めているようなものだ。

 ところが映画は「その他大勢」の中に埋もれてしまう一人ひとりのケースをピックアップし、それに固有名詞を与えて一つの物語として観客に強い印象を与えることが出来る。これぞ映画の強みであり、存在理由であり、そして正義なのだ。

 主人公のダニエル・ブレイクは医師の診断により職を失い、就職活動の真っ只中。国の手当を受けようにも複雑怪奇な手続きを優先する行政にたらい回しにされ、失業保険を維持するために就職活動を行うという本末転倒な状況に陥ってしまう。

 泥沼に嵌まった貧困層の苦悩と、彼らの存在を許してしまう行政の怠慢。弱者への憐れみと世の中への怒りに溢れた物語は、人間ドラマとしても社会派映画としても見応え抜群だ。そして、映画のど真ん中を大股で歩くダニエル・ブレイク役のデイヴ・ジョーンズの反骨精神満載なパフォーマンスに突き動かされ、厳しい状況に置かれても人間としての尊厳を失わないひたむきさが全力で肯定されていく。辛く切ない映画だが、それでも心の中にはかすかな光が灯り、希望が照らされる。儚くとも今ここで確かに生きているのだと、声を大にして名を名乗りたくなる。

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わたしは、ダニエル・ブレイクのポスター
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奥 直人

映画暦15年。思いのままをレビューにぶつけていきます。

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