映画『たかが世界の終わり』レビュー

世界よ、1秒でも早く終わっておくれ

 男は自らの死が迫っていることを家族に告げるため、12年ぶりに家へと帰る。母や妹は自分を歓迎しようとするが、なぜか兄だけは終始苛立ちを隠そうとせず、家族への悪態をこれでもかと言わんばかりに繰り返す。久々の再会は憩いの場とはならず、激しくぶつかり緊迫した空気を前に男は本題を切り出せずにいた。

 なぜ男は死が近いのか、なぜ兄はそんなに苛立っているのか、そもそも男はどうして家を出たのか、過去に何があったのか。映画を理解するために必要な情報は一切提供されず、観客はひたすらスクリーンとにらめっこしながら行間を読み解くことを強いられる。

 もちろん想像することは映画鑑賞の醍醐味の一つである。ただ、記号化された感情を演じるだけの登場人物たちの口論を垂れ流し、それをあたかも詩でも読むかのような語り口で強引に家族の確執として飾り立てる本作は完全に独りよがりで、己の美意識に陶酔した作り手の傲慢さすら感じさせる。

 受け手の咀嚼を気にも留めない一方的な作りは、もはや観客への暴力と言っても良いだろう。早く世界よ終わっておくれと、苦痛からの解放を祈り続けた99分だった。

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たかが世界の終わりのポスター
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奥 直人

映画暦15年。思いのままをレビューにぶつけていきます。

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