映画『バーニング・オーシャン』レビュー

ここで幕引きをしてはならない

物議を醸した『ローン・サバイバー』に引き続き、ピーター・バーグ監督がマーク・ウォルバーグを主演に迎えた実録ディザスター映画。記憶に新しい2010年のメキシコ湾原油流出事故を描く本作は、安全性を軽視し、企業利益を優先するBP社によって犠牲となった掘削作業員達への敬意と、鎮火に努めようとした勇気に賛歌が込められている。

生真面目なバーグは『ローン・サバイバー』と全く同じ文法を使う。事件発生までの経緯をつぶさに描写し、スペクタクル場面は娯楽性を維持しながらも痛みを込める。エンドロールではなくなった人々への弔辞を捧げ、粛々と幕を下ろす。おそらく遺族が見ても嫌な思いはしないだろうが、あまりに生真面目がすぎやしないか?

ここには批評性が足りない。事実は刻々と追っても利益優先のBP社への怒り、自然を軽視する事への警鐘がない。『ローン・サバイバー』にも根幹にはイラク戦争への批判があって然るべきだった。これが例えばポール・グリーングラス監督ならジャーナリスティックな視座から静かに怒りを込め、それを観客の腹に響かせる事に成功していただろう。ましてや本作で描かれるBP社の軽率さは今日、我々日本人が最も骨身に沁る問題ではないか。

気鋭のバーグは続け様に再びウォルバーグと組み、ボストンマラソン爆破テロ事件を描く『パトリオット・デイ』を発表。どんな映画になっているのか今から想像がついてしまうが、願わくば市井の人々をアンサンブルキャストで描く作風が、労働者への賛歌にまで飛躍している事を期待したい。

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バーニング・オーシャンのポスター
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長内那由多のプロフィール画像

長内那由多

タマネギ畑が広がる北海道のド田舎で多感な思春期を過ごす。中学2年生で「恋人までのディスタンス」のジュリー・デルピーに恋をする⇒メインの更新は本館ブログへ移行しました。こちらでは劇場公開作についてたまにアップします。

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