映画『ジャッキー ファーストレディ 最後の使命』レビュー

ナタリー・ポートマンの深淵

ケネディ大統領夫人ジャクリーンことジャッキーの伝記映画だが、パブロ・ラライン監督は月並みな実録モノに終わらせない。前作『NO』ではペルー独裁政権の終焉を1カ月間のCM合戦に的を絞って描いた監督である。今回はケネディ暗殺から国葬を取り付けるまでの4日間に的を絞り、ジャッキーの人物像をあぶり出そうとする。

ラライン監督の実録ドラマは徹底した再現性という外枠に俳優の身体性、エネルギーを収めようとしているかに見える。
前作『NO』では88年の出来事を描くために当時の撮影機材を使うというほとんど偏執的なまでのこだわりであり、そこに南米リベラルの雄ガエル・ガルシア=ベルナルのパッショナブルな演技がエモーションを与えていた。

本作でもTV放映されたジャッキーによるホワイトハウスツアーを完コピする徹底ぶりだが、映画の原動力となるのはやはりナタリー・ポートマンのキャリアの転換点とも言える爆発的なパフォーマンスだ。
ジャッキーの喋りを再現するのはほんの序の口。撃たれた夫の脳髄を拾い集め、頭からこぼれ落ちないよう押さえたという話。血まみれの外遊コートのまま終日、夫からジョンソンへの権利移譲に立ち会ったという話。元ジャーナリストという経歴から、記者の取材メモを逐次チェックしたという話。伝え聞く伝説的なエピソードを体現するポートマンの演技は単なる再現の域を超え、歴史の潮流に耐え、一時代を築いた人間だけが持つ怪物的な魔性がある。

子役という出自からか、オスカーを受賞した『ブラック・スワン』すら小女性が抜けきらず、その幼い印象が足かせのようにも見える時期もあったが、本作では35歳という実年齢がジャッキーと結びつき、ようやく大人の女優としての代表作を得たように感じられた。夫ケネディを神格化させた女の持つ凄味。それはナタリー・ポートマンという偉大な女優の深淵も映し出す事となったのだ。

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ジャッキー ファーストレディ 最後の使命のポスター
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長内那由多のプロフィール画像

長内那由多

タマネギ畑が広がる北海道のド田舎で多感な思春期を過ごす。中学2年生で「恋人までのディスタンス」にハマり、ジュリー・デルピーに恋をする。日記代わりにB5ノートに書き始めた手書きの映画レビューもすでに16年目。上手に書けたらアップさせて下さい。

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