映画『バーニング・オーシャン』レビュー

凄まじいビジュアルだが、事故の背景は2時間の枠に収まらず。

 大手石油会社BPとの契約の下で採掘作業にあたっていたトランスオーシャン社のディープウォーター・ホライズン。ところが予定と予算の超過にしびれを切らしたBP側は、本来行われるべき安全確認作業をすっ飛ばし、見切り発車で採掘を強行しようと圧力をかける。ディープウォーター・ホライズンのクルーたちは反発するも、最終的には押し切られる形で作業を開始すると、急激に噴き出したガスと油が爆発を引き起こし、辺り一帯を火の海に変えてしまったのだった。

 2010年にメキシコ湾で発生したこの災害は、利益重視のBPが最優先の安全確保を怠った結果起きた、言わば人災である。よって事故の原因は現場の技術的な不手際だけではなく、会社の体質まで遡ることが出来る。目の前の利益に目が眩むあまりより高いツケを払う羽目になった、いわゆる「起きるべくして起きた事故」でもある。

 現場の人間が命を落とす一方で、椅子の上でふんぞり返った大企業のお偉い様はまともに責任を取ろうとしない。事件の背後に横たわるのは日本の某大手電力会社でも見られた、無責任な経営者と末端の使い捨ての労働者という現代社会の縮図だ。

 しかし劇中ではそうした背景は描かれず、あくまでもあの日の惨劇を生き延びた現場の人々の英雄譚というスタンスだ。大迫力の視覚効果で演出される地獄絵図はパニック映画としては望みうる最大級のクオリティなのだが、愛する家族のために帰還を目指す勇敢な男の物語へと綺麗にハリウッドナイズされたエピソードは、むしろ実話としての説得力を削いでしまう。結局、仕事に出かける前の事故を予言していたかのような家族とのやり取りや、ハリウッドのヒーロー宜しく火を飛び越えての果敢なダイブなど、果たしてどこまでが本当だったのかと疑いの目で観てしまった。

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バーニング・オーシャンのポスター
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奥 直人

映画暦15年。思いのままをレビューにぶつけていきます。

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