映画『LION ライオン 25年目のただいま』レビュー

世界の中心で、ただいまをさけぶ

 地球は球体なので、その表面に物理的な意味での中心は存在しない。しかし、誰しも生まれ持った故郷、そしてそこで暮らす家族や思い出があるわけで、それらが各々にとっての世界の中心と言えるだろう。

 先進国で生まれた人なら、自分がどの大陸の何という国のどこどこの地域で・・・という出生に関する地理的な情報を把握しているのは当然のことのように思えるが、世界に目を向けると貧困層を中心に決してその限りではない。5歳の時に見知らぬインドの土地で迷子になり家族と離ればなれになった本作の主人公も、出身地の正確な発音はおろか母親の名前すら分からないのだ。やがてオーストラリアで養子として迎えられ立派に成長した彼は、グーグルアースをきっかけに自分の本当の故郷を探っていく。

 グローバル化の波で外へ外へと視野を広げるのが良しとされる昨今、むしろ自らの原点へと回帰を目指す物語は興味深い。世界が広がろうとも中心はただ一つ。僕たちは愛や家族を探すために生まれるのではなく、愛や家族の中に生まれて来たことを知るために生きるのだ。この世界に居場所が無いわけなんて無い、そんな底抜けにポジティブなメッセージこそ望遠鏡でひたすら遠くの世界を覗くことに必死になり過ぎた現代人にぴったりの目薬である。

 シーアが歌う主題歌「Never Give Up」が素晴らしい。元々大好きな歌手なので曲自体も何か月も前からヘビロテしていたが、映画を観ると歌詞がより身に沁みて感じられる。「決して諦めない」。四半世紀の時を越えて人を突き動かすそのシンプルなフレーズに、ありったけの勇気と決意が詰まっている。

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LION ライオン 25年目のただいまのポスター
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奥 直人

映画暦15年。思いのままをレビューにぶつけていきます。

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