映画『パッセンジャー』レビュー

2017年宇宙の旅

5000人の乗客を乗せた惑星間航行船アヴァロン号は120年の時間をかけて植民惑星へと向かっていた。30年目のある日、クリス・プラット扮するジムのコールドスリープ装置が故障。彼一人だけが目を覚ましてしまう。船内には再びコールドスリープに入るための機械はない。一度、目覚めるやそれは道半ばの死を意味するのだ。
ジョン・スパイツの脚本は示唆に富んだモチーフが散りばめられている。人間、誰もが死を迎える事はわかっているが、それを前提とした物語は稀だ。この映画は好感度の高い人気スターが死への道を成す術なく進もうとする。

広大な船内でジムは何不自由なく生活し、バーテンダーロボットを相手にとりとめもない会話を続ける。バーテンダーは客の言うこと全て肯定してくれる魔性の存在だ。孤独に耐えきれなくなったジムはコールドスリープ中の乗客から美女オーロラを見初める。彼女を目覚めさせて、この死への旅の伴侶とできないか。だが、それは本人の意思に反したいわば殺人である。それでもバーテンダーは同意してくれる。あたかもそれが素晴らしい事であるかのように。

ぞっとする展開だ。
何も知らずに目覚めたオーロラは程なくして(そりゃ、クリス・プラットだもの)ジムと恋に落ち、やがてセックスをする。まるで眠っている女性をレイプしたかのようだ。宇宙の持つ魔力が人を狂わせるのか。

一体、どんな着地をするのかとヒヤヒヤしてしまったが、それは製作の20世紀FOXも同様だったようで、後半は突然スペクタクルが挿入され、ジムとオーロラが吊り橋効果よろしく結ばれるハリウッドエンディングへと軌道修正されている。聞けばオリジナル台本はジムとオーロラによってアヴァロン号がノアの箱舟になったという。モチーフの数々は深遠なスペースオデッセイへとなるハズだったのではないか。脚本通りには仕上がらない映画製作の過酷さを久々に垣間見た。

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パッセンジャーのポスター
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長内那由多のプロフィール画像

長内那由多

タマネギ畑が広がる北海道のド田舎で多感な思春期を過ごす。中学2年生で「恋人までのディスタンス」にハマり、ジュリー・デルピーに恋をする。日記代わりにB5ノートに書き始めた手書きの映画レビューもすでに16年目。上手に書けたらアップさせて下さい。

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