映画『マリアンヌ』レビュー

カサブランカより愛をこめて

ロバート・ゼメキス監督の最新作『マリアンヌ』(原題=ALLIED)は『カサブランカ』はもとより往年のロマンス映画、そして“スター映画”にオマージュが捧げられている。時に古風すぎるきらいもあるが、ゼメキスの演出はミニマルな熟練技を身に付けており、今や巨匠の風格である。興行的にも批評的にも成果は得られなかったが、スタジオ主導の大作メロドラマでブラッド・ピット、マリオン・コティヤールという2大スターを拝められるのは映画ファンにとって眼福だ。

コティヤールがハリウッド映画で正当な主役を得ているのが嬉しい。
もちろんオスカーを獲得している人気女優だが受賞作『エディット・ピアフ』はフランス映画だったし、米映画進出後は話題作が続いたがいずれも助演だった。

本作ではゼメキスがどれだけ彼女を魅力的に撮るかに注力しているのが伺える。オスカーにもノミネートされたジョアンナ・ジョンストンの衣装は時代風俗を再現する映画ならではのファッショナブルな遊びはもとより、コティヤールの美しくも艶めかしい、曲線的な印象と存在感を可視化する事に成功した。危険な諜報員、貞淑な妻、秘密を持ったファムファタール…コティヤールは“戦火に翻弄される非業の女スパイ”というまさに大女優のための大役を堂々と演じ、大女優への階段をまた1つ上がっている。

名手スティーブン・ナイトの脚本は後半に向かうにつれプロットを追うだけの展開になってしまうのだが、前半のカサブランカでのシークエンスはとりわけ素晴らしい。夫婦に偽装したブラピとコティヤールによる暗殺計画はロマンスの予感をはらみながら、後の悲劇を予兆するかのような死の匂いも漂わせる。猛烈な砂嵐に曝されながら、車中で二人が結ばれるシーンは大スター2人による甘さよりも不安感が募るのだ。古典的な演出だが、人も金もふんだんに使われた懐古主義は心地よい。

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マリアンヌのポスター
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長内那由多のプロフィール画像

長内那由多

タマネギ畑が広がる北海道のド田舎で多感な思春期を過ごす。中学2年生で「恋人までのディスタンス」のジュリー・デルピーに恋をする⇒メインの更新は本館ブログへ移行しました。こちらでは劇場公開作についてたまにアップします。

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