映画『ホワイト・ヘルメット シリア民間防衛隊』レビュー

シリアの空

今年のアカデミー短編ドキュメンタリー賞受賞作。
連日、ロシア軍による空爆が続くシリアで消防、救急に携わる民間団体“ホワイト・ヘルメット”を追った力作だ。ここ数年、オリジナルドキュメンタリーの製作に力を注いできたNetflixにとって初のオスカー受賞作となった。

絶望的な状況に打ちのめされてしまう。
街は政府軍に包囲され、国際社会の援助は一向に届かない。隊員たちは日々、懸命に救助活動に挑むが1人、また1人と命を落としていく。ミサイルが至近距離で着弾する瞬間を捉えた映像に戦慄する。

彼らを突き動かす力は一体どこから湧いてくるのか?
元反政府ゲリラだった隊員は言う「命を奪う側ではなく、救う側に行きたかったんだ」
瓦礫の山から生後間もない赤子を救い出した瞬間、人々が歓喜したあの一体感。憎しみの連鎖がとぐろを巻く今、それでも人と人をつなぎ合わせる善意の在処をカメラは映し出している。

時代性を捉えた作品である事はもとより、包囲するロシア、そのロシアと密接につながるトランプ、そしてシリアはじめ中東7か国の入国を断ったアメリカの姿が遠景に見えてくる重要な1本だ。

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ホワイト・ヘルメット シリア民間防衛隊のポスター
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長内那由多のプロフィール画像

長内那由多

タマネギ畑が広がる北海道のド田舎で多感な思春期を過ごす。中学2年生で「恋人までのディスタンス」にハマり、ジュリー・デルピーに恋をする。日記代わりにB5ノートに書き始めた手書きの映画レビューもすでに16年目。上手に書けたらアップさせて下さい。

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