映画『無限の住人』レビュー

笑って殺して

 そもそもが、ふざけた設定ではある。

 主人公の万次は、亡き妹に生き写しの凛(杉咲花)の復讐をサポートする、死ねない用心棒……って、なんじゃ、そりゃ。敵か味方か容易には判別できぬ、腕におぼえのある剣客たちが、次々と彼らの前に現れるが、こちとら不死身なのだから、勝負は初めからついている。

 そんな存在自体が矛盾だらけの珍妙な役柄ではあるが、あの木村拓哉が演じることに意味がある。本作の企画の背景に、同じく漫画原作の超絶時代劇『るろうに剣心』三部作の成功があるのは自明だろう。主演を務めた佐藤健は、一回り以上も若い世代であるものの、今もアイドルオーラ全開の木村は、同年代の役者のみならず、彼らのような若手とも、同様の立ち位置で張り合っていかなければならないのだから、その苦労は想像を絶する。それゆえ、歳もとらぬまま生き続けなければならない用心棒というシニカルな存在に、ぴたりとハマった。

 相手役にあたる杉咲も、宮沢りえの娘役を好演した出世作『湯を沸かすほどの熱い愛』(16)を思えば、木村だって”お父ちゃん”でもおかしくない年齢。時折、『子連れ狼』のような空気が流れたりもするのだが、気持ちだけは一人前なトラブルメイカーの妹キャラを愛らしく演じ、木村と兄妹漫才のごとき名コンビぶりを発揮している。

 だからこそ、三池崇史監督だけに、もっと豪快にふざけて欲しかった不満も残る。死には到らないものの、個性溢れる勝負スタイルの剣豪らの襲撃にさらされる万次は、その都度、『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』(93)のサリーのごとき満身創痍状態に陥るのだが、そこら辺のブラックユーモア漂う設定を生かし切れていないので、ケレン味たっぷりの娯楽性と真実味が見事に融合した三池監督の『十三人の刺客』(10)のような快作になり損ねてしまったのは、残念であった。

 

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無限の住人のポスター
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服部香穂里のプロフィール画像

服部香穂里

映画界の末端で、浮草のように漂うております……。

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