映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』レビュー

SF版「ボーン・アイデンティティ」?

 「攻殻機動隊」をハリウッドが実写化。人々が電脳世界にアクセスし体を機械化するようになった近未来。対サイバー犯罪の切り札として脳以外をサイボーグ化されたミラ少佐は、ある殺人事件を捜査するうちに自らの記憶に疑いを感じ始め、背後に潜む巨大な陰謀に踏み込んでいく。

 人間と機械の境界線はどこにあるのか、そして人間であることの定義とは何なのか。テーマとしてはこれまで媒体を問わずに語り尽くされてきた感があるものの、生命倫理に深く根差した設定はSF映画に持って来いだ。

 物語自体は犯罪捜査や陰謀よりも少佐の自分探しに寄っている。ただ、彼女のアイデンティティの探求が「ボーン・アイデンティティ」よろしく“本当の記憶を探すこと”だけに終始しているのは問題だ。意識の電脳化や体の機械化など、人間と機械の境界線を突いた設定が義体化された彼女のドラマを浮かび上がらせる上で全く機能しておらず、見掛け倒しのハリボテに終わってしまっている。

 何よりスカヨハがSFの雰囲気にハマらないのは致命的。彼女の豊潤な色気はドレスに真っ赤なリップとタバコの煙をまとったクラシカルな物腰の作品でこそ活きるわけで、無機質な近未来でタイトなコスチュームに身を包み、感情表現や肉体の動きを制限された状況では観ていて息苦しさを感じるほど。傍目には全裸に見えるスーツも全くそそらない始末。役者本来の魅力まで義体化しちゃったらいかんでしょ。

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ゴースト・イン・ザ・シェルのポスター
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奥 直人

映画暦15年。思いのままをレビューにぶつけていきます。

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